図1 配布された整理券。券には抽選に関する注意書きがある。裏面には複製ができないように,店舗名のはんこが押してある。
図1 配布された整理券。券には抽選に関する注意書きがある。裏面には複製ができないように,店舗名のはんこが押してある。
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 前編はこちらから。
 プレイステーション3の予約券を手に入れる抽選会の朝がやってきた。目覚まし時計が鳴る前に目が覚めてしまう。昨晩食べたラーメンが残っているのか,それともプレッシャーからなのか胃が重い。ともかくC店に向かった。

 自宅から約1時間かけC店の最寄り駅に到着。私と同じく抽選会に参加する菊池記者に電話をかける。早起きの菊池記者はすでに整理券を獲得し近くのファスト・フード店で抽選会に向けて待機中だった。整理券は午前9時までにC店に集まった人すべてに配られる。ただし一人で60Gバイトの機種か20Gバイトの機種どちらかしか予約できないことになっていた。店で整理券をもらい,菊池記者が待つファスト・フード店に向かう(図1)。菊池記者と当選確率を少しでも高めようと急遽加わった宇野記者と共にしばらくファスト・フード店で過ごす。もちろん3人とも整理券は無線LANなど機能をフル装備した60Gバイト品の予約に向けたもの。読者の皆さんの期待を裏切るわけにはいかないからだ。

 抽選開始10分前,3人で店舗に向かうと既に店の前には約30人の行列ができていた。行列の最後尾に加わる。その後抽選開始の9時までに次々と人が集まり,平日にも関わらず最終的に行列は50人弱にまでふくれあがった。なかには孫にせがまれたのか,ご高齢の女性も並んでいる。もはや一家総出である。そのほか夫婦やカップルで並ぶ人もいる。しかし圧倒的に目に付くのは男性。大学生やスーツを着た社会人が目に付いた。

 午前9時。「20Gバイトの機種をお求めの方は先に集まってくださーい」という掛け声が聞こえる。どうやら20Gバイト品から先に抽選をするようだ。50人弱の列から15人程度が抜け,店の中に入っていく。発売初日分として予約できるのは20Gバイト品,60Gバイト品いずれも5台ずつなので,20Gバイト品の倍率は3倍程度ということになる。一方,列には32人が残っているため,60Gバイト品は6倍以上と高い。事前調査のとおり60Gバイト品の人気の高さがうかがえる。

 しばらくすると20G品の抽選が終わり,「お待たせいたしました。60Gバイト品をお求めの方お集まりくださーい」という声が。いよいよ勝負の時。緊張よりも不安で胸が高鳴る。何を隠そう私はくじ運が悪い。ギャンブルは比較的強いのだが,くじ引きでもらえるのはいつもポケット・ティッシュ。この最大の問題を克服すべく,いつも右手でくじを引くのを左手で引くことにした。自分のくじ運の無さへのわずかばかりの抵抗である。

 今回のくじ引きによる抽選はまず抽選する順番をくじで決め,その決めた順に予約券を獲得するためのくじ引きをする。まずは予約券を獲得するためのくじ引き抽選での順番を決めるくじを引く。順番は2番目と幸先がいい。左手で引いた効果だろうか。次の本番のくじ引きも左手で引くと決意。くじ引きの結果,菊池記者は12番目,宇野記者は16番目と,私,菊池記者,宇野記者の順で本抽選のくじを引くことになった。菊池記者は「我々(私と菊池記者)がはずれを引いてお膳立て。主役の宇野さんが当たりを引く,というストーリーだね」と予想を立てる。どのようなストーリーでもいいからとにかく手に入れたい。

諸行無常のひびきあり


 いよいよ本番。前の1番目の人ははずれ。2番目の私の順番になる。左手をくじの入った袋に入れ,くじを引く。その場でホチキスによって閉じられているくじを開こうとする。が手が震え,なかなか開かない。ようやく開く。

はずれ

の文字が目に飛び込む(図2)。店員の慰めの言葉も耳に入らない。言われるがまま店の外へ出て二人の結果を窓越しに見守る。私のあとはしばらくはずれが続く。10人目くらいでようやく一人目の当選者が。残った二人の当選確率は最初よりも高まっている。今度は菊池記者の番。くじを引く菊池記者。わき目も振らずまっすぐに店の出口に向かってくる。はずれである。

 こうなれば希望は宇野記者のみ。二人で窓越しに念を送る。いよいよ宇野記者の順番。くじを引く宇野記者。

戻ってこない!

 ということは,どうやら当選した模様。外で菊池記者と熱い握手を交わす。まさに菊池記者の予想通り。すばらしい。「発売日に買えなかったら根津君を解体しようか」と,悪い冗談を言っていたEデスクが喜ぶ姿が目に浮かぶ。

 予約券を持って宇野記者が出てくる。うれしそうなものの,それほど興奮した様子ではない。いたって冷静である。むしろ「何で自分が欲しいものはいつも当たらないのだろう」とやや不満げ。さらに「引き当てたから,いま抱えている原稿の締め切りのびないかな」と,代替要求を口にする。それはEデスクにお願いしてみて下さいね,宇野さん。ところで予約券は普通のレシートに毛が生えたような簡素なもの(図3)。「お財布に入れておくと他のレシートと一緒に捨ててしまいそう」(宇野記者)。確かに。保管場所は考えないとまずい。

 編集部に戻る途中,これまでの緊張感から開放されたせいか,朝食を食べていないこと思いだし,急に空腹感を覚える。駅の売店で栄養ドリンクを飲み,これからの本日の仕事に備える。まだ時間は午前10時。ほかにもたくさんの仕事が待っている。しかし編集部に向かう足どりは今までになく軽い。

 かくして日経エレクトロニクス分解班は,プレイステーション3を11月11日に入手できるメドがたった。しかしこの3日間の戦いは単なる前哨戦。むしろここからが本当の戦い。気を引き締める。発売まであと12日,締め切りまで約2週間である。

図2 はずれのくじ引き券とそれを引いてしまった筆者の左手。はずれの文字が寝不足の頭に染み渡る。
図2 はずれのくじ引き券とそれを引いてしまった筆者の左手。はずれの文字が寝不足の頭に染み渡る。
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図3 PS3の予約券とそれを引き当てた宇野記者の幸運の手。
図3 PS3の予約券とそれを引き当てた宇野記者の幸運の手。
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