TCL集団 CEO兼Chairmanの李東生氏。写真:中島正之
TCL集団 CEO兼Chairmanの李東生氏。写真:中島正之
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TCL集団 COOの史万文氏。写真:中島正之
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 中国TCL集団は,テレビの2005年の出荷台数で中国一&世界一の家電メーカー。2004年に仏Thomson社のテレビ部門を合併するなどして現在の地位を築いた。日本の家電メーカーとも積極的に提携を進めており,2002年には松下電器産業と,2004年には東芝と提携している。ただし,世界一のテレビ・メーカーといっても販売しているテレビの9割強はCRT。薄型テレビの販売は出遅れている上に赤字を出している。今後,薄型テレビへの移行をどのように進めるのか,また日本の家電メーカーとの関係や日本市場への参入計画の有無などについて,同社の李東生CEO兼Chairmanおよび史万文COOに聞いた。(聞き手=内田 泰,野澤 哲生)

――TCLのテレビの販売状況は?

TCL社 2005年の出荷数は世界全体でOEM製品も含めると2300万台。台数ベースでは世界1位,中国でも1位だ。北米ではソニーや韓国Samsung社に次いで3位。ただし,北米では売上げベースでトップに大きく水をあけられている。

 液晶テレビの販売台数は2006年は世界全体で150万台の見込みで,2005年に比べ50%増えそうだ。2007年は250万台を見込んでいる。赤字だった薄型テレビの収益もこの2年で大きく改善した。メキシコに工場を建設してコスト削減や生産効率を向上させたことが実を結んだ。

CRT市場は捨てない

――メーカーの多くが薄型テレビへの移行を加速させている中で,CRTにこだわる理由はなにか。薄型テレビへの完全切り替えはいつ頃になるか。

TCL社 日本や西ヨーロッパでは薄型テレビが急伸していて2010年には完全に切り替わると聞いている。ただ,世界ではまだまだCRTが主流だ。米国でもCRTが当分続くと見ている。米国では住宅が広いので,(液晶テレビなどを飛び越えて)大型プロジェクタにも強いニーズがある。我々も,今後は薄型テレビに重点を置いていくが,現在はいつ全面的に移行するといった計画はない。

――液晶テレビでは松下,ソニー,Samsung社はもとより海信集団や長虹電子集団など中国メーカーにも市場シェアで先行を許している。彼らに追い付く戦略はあるのか。

TCL社 一つ強調したいのは,たとえ異なるブランドやメーカーの製品でも,部材レベルではメーカー間で違いはないという点だ。どのメーカーもパネルの部材は台湾か韓国で作っており,全く同じ部材を使っていることも多い。違いは,ブランド・イメージにあるわけで,我々は,部材や工場,販売の強化と同時に,ブランド・イメージの向上を最も重要な戦略に据えている。

中国の地デジは北京五輪前に開始へ

――デジタル放送への対応計画は? 特に中国ではいつ製品を出すのか。

TCL社 中国ではデジタル放送の標準仕様がごく最近決まったばかり(関連記事)。2015年に完全にアナログ放送から切り替えるというのが中国政府のプランだ。我々の具体的な対応はこれからで,製品の発売時期などはまだ決めていない。ただし,技術的にはもう準備が済んでいる。すでに北京や上海,広州などで4都市で実験放送も開始している。中国では地域ごとに移行のスケジュールが違い,それらの詳細はまだ決まっていないが,大都市では2008年8月の北京オリンピック前には,放送サービスが始まるだろう。

――研究開発体制について聞きたい。

TCL社 研究開発の拠点は,中国の深セン,米国シカゴ,ドイツ,シンガポール,フランスなどにあり,研究開発費も今後増えていくだろう。カラーテレビの技術者は1500名ほどいる。ただし,我々はあくまで家電製品の製造がメインで,研究開発に寄りかかることはない。

――SEDを開発していると一部報道されているが,東芝などと技術提携があるのか。

TCL社 確かにSEDに似た技術を独自に研究はしているが,東芝とキヤノンのSEDとは違う。ライセンスの供与なども受けていない。

――TCLは,ソニーなどとデジタル技術の特許料で係争中だが。

TCL社 詳細については今ここで回答できないが,IPについての基本姿勢は,支払うべきものは払うということだ。ただし,支払いの要求には必ずしも正当でないものもあり,よく検討することが必要だ。IPの件では,中国のほかの家電メーカーとある程度連携していく必要があると思っている。

――日本市場に参入する計画は?

TCL社 日本におけるテレビなど家電の販売は当分考えていない。日本は非常に競争が激しい上に,流通上のルールが複雑で参入が難しい。ただし,日本の家電メーカーとは,積極的に交流を進めている。日本のメーカーには,高い技術力やブランド力,安定した市場がある。一方,我々には世界各地域のニーズに合った製品を迅速に開発する力や優れたSCM(supply chain management)がある。中日のメーカーは相互に補完し合う関係になれるのではないか。