リコーは,層間クロストークを抑えて多層ディスクの再生を容易にする光学素子「RTPS(reflection type polarization longitudinal slit)」を開発し,「ISOM'06」で公開した。実際にRTPSを搭載した光ヘッドでHD DVD-ROMを再生したところ,ジッタを3%改善できたという。Blu-ray DiscやHD DVDの2層媒体の記録再生に使えるほか,第4世代光ディスクの多層化を容易にする技術として注目を集めそうだ。

 RTPSは,素子の右半分をλ/2波長板として加工した反射板で,対物レンズから特定の距離で反射した光以外をカットできる。このため,読み出したい層に近接する層によるクロストークを抑えられる。微小な穴にレーザ光を通して余分な光を遮断するピンホール方式と比べ,デフォーカス・サーボの性能を損なわない利点がある。

 同素子は,再生だけでなく記録にも応用できるという。光ディスクに記録する際には,光ディスクからの反射光をトラッキング・サーボ信号として捉える必要があるが,このサーボ信号も層間クロストークの影響を受けるためだ。特に,Blu-ray Discの2層記録を実現できない場合の理由の一つに,3ビームによるPush-Pull法でトラッキングすると,2つの副ビームが主ビームの層間クロストークの影響を受けてしまうことがあるという。リコーは,今回のRTPSを改良して3ビーム方式に対応させることで,Blu-ray Discの2層記録の技術的難度を下げられるとみている。