工場の「国内回帰」が著しい。特に,技術的に難易度の高い製品をいち早く量産する場として,国内工場の存在感が強くなっている。だが,人件費などの高コスト要因がなくなったわけではない。こうした問題を乗り越えるべく,トヨタ生産方式(TPS)に学び,工場の生産性を高めようとする動きが活発だ。そこで,工場における改善活動を成功させるための秘訣を,オージェイティ・ソリューションズ(OJTS,本社名古屋市)専務取締役の上畑廣高氏に聞いた。

 OJTSは,トヨタ自動車とリクルート,リクルートスタッフィング(本社東京)が共同出資する形で2002年4月1日に設立された。出資比率はそれぞれ51%,33%,16%である。業務形態は,トヨタ自動車の退職者が「トレーナー」として顧客の工場の改善活動を指導するというもの。顧客企業はプロジェクトチームを設け,チームのメンバーが現場を動かすことで改善を進めていく。

 一般に,改善活動を阻むのが現場の「抵抗勢力」。抵抗勢力の圧力に屈し,改善活動が“道半ば”で途絶えることがある。コンサルタントの指導で工場の改善が進んでも,コンサルタントがいなくなった途端,工場が元の状態に戻ってしまうことも少なくない。

(聞き手は高野 敦=日経ものづくり)


――OJTSのトレーナーは具体的に何をするんですか?

上畑氏:まず当社のトレーナーは「職場診断」を実施します。幾つかの項目に関して採点していくのですが,ここから工場の抱える課題が浮き彫りになります。この結果を基に取り組むべきテーマを決めていくわけです。

 テーマは5S,標準作業の確立,工程のムダ取りなど顧客ごとにいろいろあるのですが,顧客側の改善チームのメンバーにカイゼンに関する豊富な知識があるとは限りませんので,スタートは座学から入ります。

 トレーナーが言う通りにやるだけでもその場の改善だけならできます。しかし,我々に課せられた使命は顧客の工場を我々が直接改善することではなく,顧客に改善する力を身に付けていただくことです。もし,トレーナーが何から何まで手出ししてしまえば,トレーナーがいなくなった途端に,現場は元の姿に戻ってしまうことでしょう。

 従ってまず座学,それから実践です。複数のテーマがあればこのサイクルを繰り返します。最終的にはメンバーが成長し,自律的にカイゼン活動を行えるまでになることが目標です。

思うように改善できない理由とは…