ZigNETのシステム構成
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ZigCubeは各種センサ・ユニットと接続して利用する
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マルチ・ホップ接続が可能なZigStation
マルチ・ホップ接続が可能なZigStation
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監視装置であるSolidBrain
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 日立グループで社会・産業インフラ事業を手がける日立プラントテクノロジーは,約10kmと長距離伝送が可能な無線センサ・ネットワーク・システム「ZigNET」を開発,販売を開始した(発表資料)。複数の端末を経由してデータをバケツリレーのように伝送するマルチホップ接続機構を採用することで,10kmの伝送を可能にした。化学プラント工場内の各種システム運転状況や,ビルの空調システムの稼動状況,河川の水位などを遠隔管理する用途に向ける。基本セットの価格は126万円に設定した。日立グループ内での利用を含め,2010年度に年間10億円の受注を目指す。

ZigBeeを採用


 システムは,3種類の端末で構成する。データ取得用の各種センサを接続する小型無線センサ端末「ZigCube」と,最大15台のZigCubeと接続してデータを集める「ZigStation」,そしてZigStationのデータを監視して外部ネットワークに携帯電話網経由で送信できる監視装置「SolidBrain」である。ZigCubeに接続した温度/圧力/振動/水位といったデータを,ZigStationを経由してSolidBrainに集め,外部に送信する構成だ。

 ZigStationには,2.4GHz帯利用の無線規格「ZigBee」を採用しており,ZigStation間の最大伝送距離を1km程度確保できる。またZigBeeが備えるマルチホップ機構を使うことで,10~12ホップを経由してデータ伝送すれば,約10km程度の遠隔にあるZigStation間でのデータのやりとりが可能になる。最終的にデータを集約するSolidBrainは,ZigBeeに加えてCDMA 1xEV-DOの送受信モジュールを組み込んでおり,携帯電話網を通じてデータを送受信できる。なお末端のZigCubeとZigStationの間の接続には,300MHz/400MHz帯の微弱無線を利用しており,最大伝送距離は30mほどである。

 マルチホップ接続が可能なZigStationは,韓国NURI Telecom Co.,Ltd.の日本での事業会社であるヌリテレコムの技術を導入することで開発した。ヌリテレコムはZigBee用送受信モジュールおよびソフトウエア・スタックの開発を進めている(ホームページ)。同社のZigBeeモジュールには,米Ember Corp.の送受信チップを使う。マルチホップ接続時の経路情報などのデータを格納するため,128Kバイトのメモリを搭載している。ZigBeeの最大データ伝送速度は約250kビット/秒である。

 ZigCubeで利用する微弱無線モジュールは日立グループが手がけたもの。ZigCubeのみ微弱無線を使っている理由は,「ZigCubeは単三乾電池2本で約2年間の動作(5分に1回データを送る場合)を想定している。そうした低消費電力での駆動を実現するにはZigBeeでは厳しく,微弱無線を利用するのが最適と判断した」(日立プラントテクノロジー)。ZigCubeが搭載するメモリは数十Kバイトである。なおデータ監視装置であるSolidBrainは,組み込みコンピュータを手がけるPDXジャパンと共同開発した(ホームページ)。 
 
 基本セットとして126万円で発売するシステムは,温度センサ付のZigCubeが3台と,ZigStationが2台,SolidBrainが1台,そしてデータ監視用のソフトウエアで構成する。伝送距離を伸ばす場合にはZigStationを別に買い増す必要があるが,個別の価格はまだ設定していない。日立プラントテクノロジーは「プラントをはじめ,無線による遠隔監視のニーズは大変強く感じており,将来の大きなビジネスになると期待している」(同社)と話す。また海外でも同様のニーズがあることは把握しているが,今のところ海外展開は検討していないとしている。