プリント基板に実装された光モジュール
プリント基板に実装された光モジュール
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 NECは,伝送速度10Gビット/秒の光信号12チャネル分を一括して電気信号に変換する光モジュールを開発したと発表した(発表資料)。特徴は大幅な高密度実装と小型化を実現したこと。モジュールの実装面積は4.5mm角。10Gビット/秒の光モジュールの規格品に比べて実装面積で約1/70,NECの従来の高密度実装技術を用いた光モジュールに比べても同1/3に小型化した。

 今回の開発の目的は,数~10PFLOPSの演算性能を目指す次世代スーパーコンピュータへの利用。具体的には,LSIとメモリ間などチップ間伝送の高速化が狙いである。

 開発した光モジュールは,送受信用IC1個と数個の電源用キャパシタ,12端子の微小電極および受発光素子を4.5mm角のガラス・セラミック基板に直接実装したもの。発光素子にはアレイ型の面発光レーザ(VCSEL),受光素子にはフォトダイオード・アレイを用いるが,光モジュールの薄い側面に張り付けて利用する。

 この実装方法のメリットは,(1)実装面積を大きく減らせる,(2)導波路や光ファイバをミラーなしで直結できるため光信号の損失が減る,(3)電気配線を短くできるため,より高速の駆動や電磁雑音の低減が可能になる,ことなどである。

LSIの2000端子をすべて20Gビット/秒の光信号に

 NECは,LSIを中央に実装した10cm角のプリント基板の4辺にこの光モジュールを約80個並べることによって,LSIが備える2000個の端子を使ってやり取りする1000チャネル分の入出力信号をすべて光に変換することが可能になったとする。既に,NECは2006年3月に25Gビット/秒で動作するVCSEL素子を開発済みである。仮に目標とする1チャネル20Gビット/秒の信号を1000チャネルでやり取りすると,全体では伝送容量20Tビット/秒が可能になるという。

 ただし,今回はテスト用として,光モジュールを送信/受信それぞれ4個ずつ用意し,テスト用のLSIが装着された42mm角のプリント基板に実装。このプリント基板を2枚用意し,2個のLSI間で10Gビット/秒の信号を48チャネル分送受信できることを確認した。光モジュール間の伝送距離は数mだったという。

 今回のNECの開発は,文部科学省の「将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発」において「超高速コンピュータ用光インターコネクションの研究開発」という研究課題に沿ったもの。事実上,2010年ころに完成を目指す次世代スーパーコンピュータ「汎用京速計算機」に用いる要素技術の候補,という位置付けである。

 【訂正とお詫び】

当初の記事中で「伝送速度20Gビット/秒の光信号12チャネル分を一括して電気信号に変換する光モジュールを開発した」としていましたが,20Gビット/秒は目標値で今回の開発は伝送速度10Gビット/秒でした。また「10Gビット/秒の光モジュールの規格品に比べて約1/80」としていたのは,実装面積で約1/70,の誤りです。記事は既に訂正済みです。お詫びして訂正いたします。