アルバックマテリアルは,ITOや銅(Cu),銀(Ag),金(Au)といった金属微粒子を溶媒に分散させた「ナノメタルインク」を「第28回 真空展」(2006年9月13~15日に東京ビッグサイトで開催)に出展し,最近の開発状況などを明らかにした。

 透明電極を印刷技術で形成する用途に向けるITOインクについては,230℃で焼成後の抵抗率を従来よりも1ケタ下げることができたという。従来のITOインクを使ってITO膜を形成すると,スパッタ装置で形成する一般的なITO膜に比べて抵抗率が2ケタ大きいかった。現在のITOインクを使ってもスパッタ装置によるITO膜より抵抗率は高いものの,「1ケタ大きい水準にまで抑えることができている」(開発を担当するアルバック・コーポレートセンターの説明員)と説明する。ITOインクのサンプル品の納入先では,「ITOインクを使ったITO膜を厚くするなどして抵抗率を一般的なITO膜と同等にし,ITOインクの応用開発を進めているようだ」という。

 ITOインクの焼成温度についてはさらに下げることも可能とする。ただし,現状はまだ「ITOインクの材質が不安定になってしまう」(前出の説明員)という課題がある。その結果,焼成前にもかかわらずITO微粒子が凝集し,溶媒中に沈殿するという問題が起こってしまう。現在,このような問題を回避しながら抵抗率や焼成温度を下げる開発を行っているという。

 プリント配線基板の配線を印刷技術で形成できるとして関心が高いCuインクについては,350~400℃で焼成後の抵抗率が,バルク状態のCuよりも若干高い水準にまで下げられるようになったという。Cuインクは酸化しやすいため,酸素分圧が3Paで熱処理後,10-4Pa程度の真空条件で引き続き熱処理するという2段階の焼成が必要になる。

 Agインクについては,150℃で焼成できる品種を展示した。焼成後のAg膜の膜厚が0.25~0.3μmのときの抵抗率は3~4μΩ・cm程度である。従来のAgインクの場合,220℃で焼成後の抵抗率は1.9μΩ・cmだった。なお,バルク状態のAgは,抵抗率が1.6μΩ・cm程度である。

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