展示の様子。右側にある台の上に送信モジュールを使った外付け装置と映像再生装置がある。
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送信用モジュールを使った外付け装置の中。左下にあるのが,米Tzero社のUWB用チップセット
送信用モジュールを使った外付け装置の中。左下にあるのが,米Tzero社のUWB用チップセット
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パケット誤り率の比較
パケット誤り率の比較
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 米Tzero Technologies,Inc.と米Analog Devices,Inc.は,広帯域無線伝送技術のUWB(ultra wideband)技術とJPEG 2000を利用したHDMIの無線化用モジュールを開発した。主にデジタル・テレビや光ディスク装置などを使った映像再生装置,ゲーム機,セットトップ・ボックスなどのAV機器に向ける。

 送信用モジュールと受信用モジュールを組み合わせて使う。送信用モジュールはHDMI受信IC,受信用モジュールはHDMI送信ICをそれぞれ備えており,現行のHDMI対応機器に外付けモジュールとして直結したり,そのまま内蔵したりすることが可能である。

 送信モジュールと受信モジュール間の伝送には,空間多重伝送技術の「MIMO」を利用可能。壁越しの「見通しなし」の場合でも,5~10mの距離を480Mビット/秒で伝送できるという。約100Mビット/秒ならば,25m程度伝送できるとする。3.1G~4.8GHzでの送受信に対応する。

パケット誤り率が低い


 開発したのは,正確に言うと動画伝送用モジュールを作るためのレファレンス・ボードである。同ボード上には,米Tzero社のUWB用チップセット「TZ7000」,米Analog Devices社のJPEG2000対応LSI「ADV202」が搭載されており,受信モジュールには米Analog Devices社のHDMI送信IC「AD9389」,送信モジュールには同受信IC「AD9380」を採用する。

 今回搭載したTzero社のUWB用チップセットは,2006年6月に発表されたもの(Tech-On!関連記事)。トランシーバLSIと,ベースバンド処理およびMAC回路層LSIから構成されている。特徴の一つとして,「UltraMIMO」と呼ぶ同社の2×2のMIMO技術を実装しており,誤り訂正後のパケット誤り率は10-8を実現したという。他の無線伝送規格の10-1~10-2よりも非常に低い誤り率を誇るとする。同社のチップセットは,業界団体のWiMedia Allianceが推進するUWBの規格の一つでネットワーク通信技術にTCP/IPを利用する「WiNET(WiMedia Network)」に準拠する。

 今回の構成によると,端末間のインタフェースとしてベースバンド映像を扱うHDMIを採用するものの,実際の無線伝送用にJPEG2000を採用し,映像データを圧縮して送信する。また,無線伝送区間は鍵長128ビットのAES方式を使って暗号化する。

 現在伝送できるのは720p/1080iまでだが,今後の製品で1080pまで対応させるという。このレファレンス・ボードを使った外付けのインタフェース装置の価格としては,200米ドル程度を想定する。同ボードのサンプル出荷を2006年9月に,さらに2006年12月には量産出荷予定である。なお,今回の動画伝送用モジュールを利用した実演を2006年10月に開催予定の「CEATEC JAPAN 2006」で行う予定である。