図1 ポリイミド膜で表面を覆ったルアー「STROM(ストローム)」
図1 ポリイミド膜で表面を覆ったルアー「STROM(ストローム)」
[画像のクリックで拡大表示]
図2 ポリイミド膜の膜厚で色合いを制御
図2 ポリイミド膜の膜厚で色合いを制御
[画像のクリックで拡大表示]

 アルバックとタイゴールドは共同で,厚さ数百nmのポリイミド膜を表面に被覆したルアーを開発し,販売を開始する(図1)。「ルアー自身が発色したかのように,外光を浴びたルアーは従来のルアーに比べて色合いが鮮やかになる。魚の興味を引き付けるので,釣れる確率が高まる」(アルバック)という。色の付いたシールを張ったり,塗装したりしていた従来のルアーに比べると,同社らの調査では時間当たりに魚が釣れる確率が約4.4倍に跳ね上がったとする。重さが2.4gと3.7gの品種を用意した。価格は1個3000円。アルバックの関連会社であるタイゴールドが販売を担当し,「STROM(ストローム)」という商品名で2006年10月中旬ころにネット販売を始める。

 色付けかつ光沢仕上げしたルアー表面を,蒸着重合法によって形成した光透過率が高いポリイミド膜で覆った。光の干渉効果によって色合いが決まり,ポリイミド膜の厚さと光の波長の関係を利用して調整する(図2)。ホログラムのように見る角度によってルアーの色合いを変えられるようにできたり,ポリイミド膜の成膜条件を工夫すれば虹色模様のようなグラデーションの色合いを備えたりすることも可能である。虹色模様にすると魚を釣れる効果が高まる。アルバックらの調査によると,ポリイミドで被覆しない場合に比べ,ピンク色になるように被覆すると約2.6倍に釣れる確率が高まり,虹色模様にすると約3倍に上昇するという。

 蒸着重合法によって形成したポリイミド膜は,医療機器に使うカテーテルや,射出成形用の金型での断熱膜,プリンター用部品の一部,電気絶縁用の被膜などに使われている。ガラスや金属などの表面を,ポリイミド膜で薄く均一に被覆できることが特徴である。今回のルアーへの応用は,釣りが趣味の開発者の思い付きがキッカケだったという。光透過率が高い薄い膜で表面を覆えば,ルアーの形状が湾曲していることもあり,珍しい光沢を持たせられるとの観点から開発が始まったとする。