開発評価用のシステム
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 映像機器などを手がける米Focus Enhancements社は,家電機器への搭載に向けたUWB用チップセットを開発,来年早々にも発売することを明らかにした。7GHz付近の比較的高い周波数帯での送受信に対応することで,日米欧の広い地域での利用を想定する。家電機器間におけるストリーミング映像の無線伝送への適用を目指す。

独自方式で最大880Mビット/秒に


 チップセットの名称は「Talaria」。3.1G~7.2GHzでの送受信に対応しており,いわゆる低域バンド(3.1G~5GHz前後)に加えて,高域バンドも一部利用できることから高速化を実現しやすいという。Focus社はビデオ・カメラや携帯型音楽プレーヤなどで利用するビデオ出力IC(down scan converter IC)を手がけるなど,映像出力周辺の市場に注力している。UWBチップを同社の製品群に加えることで映像出力関連製品の付加価値向上を目指している。関連ICの日本でのマーケティング強化を狙い,日本事務所も設立した(発表資料)。

 UWBの伝送方式には,「DS-OFDM」と呼ぶFocus社の独自技術を使う。この方式の場合,7~8mの距離(見通し)において実効的な最大データ伝送速度を880Mビット/秒まで高められると主張する。「試作システムでは,42m伝送しても37Mビット/秒の伝送速度を確保できた」(Focus社)。日本でUWBに当面利用可能な帯域(4.2GHz~4.8GHz)を使った場合の実効的なデータ伝送速度は,「最大で480Mビット/秒程度」(Focus社)という。

 同社は2002年2月に米国でUWBの利用が解禁になったのを契機に,社内にUWBのプロジェクト・チームを立ち上げて開発を進めてきた。Focus社の本社は米オレゴン州Hillsboroにあるが,隣接地域に拠点を構える米Tektronix社出身のエンジニアなどが参加しているという。現在のところ,UWB用チップの開発に携わっている技術者は,約100人に及ぶ。

 チップセットはRFトランシーバICとベースバンド/MAC処理LSIの2チップ構成。サンプル出荷は2007年第1四半期,量産出荷は同第3四半期の予定である。チップの消費電力は未公表。チップセットとしての供給ではなく,モジュールに実装した形態で供給する。既にMAC処理用LSIに関しては2006年5月に試作済みである。