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【第2回・日本の現状】国内でもカプセル内視鏡の利用開始は目前?【訂正あり】

2006/09/07 12:30

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 前回は,カプセル内視鏡を最初に開発したイスラエルのギブンイメージング社の開発経緯について主に紹介した。では,このカプセル内視鏡,日本への導入についてはどうなっているのだろうか。


 日本人で,最初にカプセル内視鏡の実物を目にしたのは,恐らく獨協医科大学 学長の寺野彰氏だろう。それは,2001年に米国で開催された消化器科の専門医向けの学会でのことだ。

 その前年の同学会で,動物実験の結果を中心にしたカプセル内視鏡の発表があり,寺野氏は当時からカプセル内視鏡に注目していた。続く2001年の学会では,ギブンイメージング社の大規模なブース展示が行われ,そこにカプセル内視鏡の実物が展示されたのだ。

 「長いチューブを挿入するという従来の内視鏡検査の概念が根底から変わる可能性がある――」。寺野氏らは実物を目の前にして,変革の大きな波が迫っていることを強く予感した。折しもギブンイメージング社では,日本での販売を目指した検討が始まっていた。

診断面でX線より高い評価

 双方の思惑が一致し,学内の倫理委員会の承認を得て2003年に,獨協医科大学病院と社会保険中央総合病院で臨床試験が始まった。対象は,消化管内に浮腫や潰瘍などが生じる慢性の炎症性疾患「クローン病」を中心とする小腸疾患がある患者65人。

 クローン病は未だに原因不明の病気で,確立された治療法も無い。徐々に消化管が炎症によって狭くなり,手術を余儀なくされることもある。闘病が長期にわたるため,経過観察のための検査が欠かせない。臨床試験は具体的には,これまで小腸の検査に広く使われてきたX線を用いる「小腸二重造影法」とカプセル内視鏡の診断精度を比べる方法で行われた。

 ちなみに,2003年1月に,寺野氏はカプセル内視鏡を個人輸入し,自ら飲み込んで試してみている。飲み込む際に少し違和感を感じる程度だったという。

 臨床試験の結果の詳細は明らかになっていないが,カプセル内視鏡では,小腸二重造影より明らかに多くの所見が得られ,診断面で優れていると評価された。この結果を基に2004年3月,医薬品医療機器総合機構に医療機器としての承認申請が行われた。しかし,同年4月の独立行政法人化と重なった影響もあり,2年以上が経過した今も,まだ申請中の段階から抜け出せていない。

 なぜこんなに承認申請に時間がかかるのか――。カプセル内視鏡は,既に海外50カ国以上で,35万人以上に使用されている検査法である。

 米国で医薬品や医療機器の認可などを行う米食品医薬品局(FDA)では,小腸の病気が疑われた場合,小腸二重造影法よりも優先してカプセル内視鏡検査を行うよう既に2003年から勧めているほどだ。欧州消化器内視鏡学会でも2004年に,原因不明の消化管出血の患者に対し,最初にカプセル内視鏡検査を行うよう勧めている。

 テレビなど,マスコミで報道される機会も増え,獨協医科大学には,原因不明の消化管出血といった小腸の病気が疑われる患者から「ぜひカプセル内視鏡検査をしてほしい」という問い合わせが多く寄せられるようになった。

 こうした事態を受けて,2004年に同大学光学医療センター内視鏡部門長の中村哲也氏が中心となり,全国10施設の医師が参加する「カプセル内視鏡研究会」を立ち上げた。

登場は今年秋か?

登場は今年秋か?

 同研究会では,カプセル内視鏡を個人輸入し,医師による自主研究の形で,カプセル内視鏡検査を実施している。患者が負担するのは基本診察料のみだ。少しずつ参加施設が増加し,現在は全国約15施設で検査が行われている。今年4月時点で,日本国内での検査施行件数も900件近くに上り,徐々に普及しつつあると言えよう。

 同研究会では,対象患者や検査を行うべきではない患者といった,独自の使用ガイドラインを定めている。また,従来の内視鏡検査では,チューブの先端の穴から空気を入れて,消化管を引き伸ばし膨らませた状態で内部を観察していた。しかし,カプセル内視鏡は,自然な状態での消化管内の画像を撮る。つまり,従来の内視鏡画像とは,得られる画像が大きく異なるわけだ。内視鏡先端を自在に操作して元の場所に戻ったり画面を拡大するといったこともできない。

 このため同研究会では,小腸でよくみられる病気ごとに画像アトラス(参照用画像)を作成するなど,カプセル内視鏡独自の画像をどう診断するか,医師の診断能の向上を目指し,積極的な活動を行っている。

 一方,国産のカプセル内視鏡開発を目指す動きも出てきた。2004年11月に日本国内の消化器内視鏡市場の約7割を握るオリンパスメディカルシステムズが周辺技術の開発に成功したと発表,満を持して開発に乗り出した。

 このほか,日本ではアールエフ,韓国でも複数の企業が開発に取り組んでいる。ただ,どちらも「今年中に臨床試験開始予定」などと華々しく報道された後,進捗状況について全く公表されないため,どの程度開発が進んでいるか,実態は不明だ。

 オリンパスメディカルシステムズのカプセル内視鏡は,慶応義塾大学病院と昭和大学横浜市北部病院で,2004年秋から2006年春にかけて臨床試験が行われ,現在承認申請の準備中。ギブンイメージング社と合わせて2社のカプセル内視鏡が認可待ちとなる日も近いことから,関係者の間では2006年中には認可が下りるのではないかと期待する声が高まっている。

 なお2005年10月から,オリンパスメディカルシステムズのカプセル内視鏡は欧州33カ国で発売されている。欧州では臨床試験が不要で医療用具としての申請のみのため,日本より早い発売となった。国によって医療制度が異なるため,価格は公表されていない。

 臨床試験に携わった慶応義塾大学 内視鏡センターの緒方晴彦氏は,2006年5月の日本消化器内視鏡学会で,試験の進捗状況を報告した。それによれば,試験の対象患者は,あらかじめ他の検査法で小腸に狭窄や重度の癒着が無いことが確認され,小腸の病気が疑われた37人。何らかの異常所見が見つかった確率は,小腸二重造影が38%であったのに対し,カプセル内視鏡では81%に上った。

見かけはそっくり


【写真1】 カプセル内視鏡の外観。
(クリックで拡大。提供:オリンパスメディカルシステムズ)

 では,この2社のカプセル内視鏡,どういった違いがあるのだろうか。

 実は,両社のカプセル内視鏡,外形はきわめてよく似ている(写真1)。直径11mm,長さ26mmの錠剤型である点はほぼ同じ(連載第1回参照)。これは,自然な状態での小腸の内径を考えると,ちょうどこの程度の大きさになるのは無理のないことだ。

 カプセル内視鏡の詳しい仕様について,オリンパスメディカルシステムズは公開していないが,先端に半球形の透明カバーがあり,レンズや照明用のLED(発光ダイオード)が6個,ボタン電池2個などが内蔵されている点もギブンイメージング社の製品と似ている。

 オリンパスメディカルシステムズは開発発表当初,磁気を利用してカプセル内視鏡の位置を自在にコントロールする「全方位誘導システム」や,撮像素子などに必要なエネルギーを体外から電磁誘導によって供給する「無線給電システム」を売りにしていた。

 だが,現在臨床試験を行っているカプセル内視鏡は,内視鏡本体を飲み込んだ後,消化管の蠕動(ぜんどう)運動に乗って,自動的に1秒2枚画像を撮影し,被験者の腹部に貼ったアンテナを通してデータを体外の小型記録装置に保存するというもの。基本的な仕組みもギブンイメージング社のものと大差ない。ただし,固体撮像素子は異なる。

 ギブンイメージング社のカプセル内視鏡は,駆動時間を長く,かつ安価にするためにCMOSセンサを用いている。一方,オリンパスメディカルシステムズは,CCD素子を採用した。恐らく駆動時間を犠牲にしても画質を向上したいという方針に従ったものと考えられる。

 この影響か,オリンパスメディカルシステムズのカプセル内視鏡検査の際には,内視鏡本体を飲み込んで1時間後に,リアルタイムビューワでカプセル内視鏡の位置を確認,胃まで到達していなかった場合には,消化管運動の調整薬を筋肉注射する必要がある。あまり進行がゆっくりだと,肝心な部分で電池切れを起こし,画像が得られない心配があるからだろう。

 一方のギブンイメージング社は,画質よりも「見落としを少なくすること」を第一の目標に製品の改良を続けている。そのために同社が取ろうとしている方策は2つある。まず,撮影間隔を現在の0.5秒に1枚よりさらに短くすること。そしてもう1つは駆動時間を長くすることだ。駆動時間が短いと,十二指腸や,小腸の途中で,画像が切れてしまう可能性があるためだ。

 さらに最近,カプセル内視鏡は小腸疾患に光を当てるだけにとどまらず,新たな方向に踏み出そうとしている。それは,従来の内視鏡が得意としていたはずの分野,食道や大腸といった他の臓器への進出だ。

 次回は,各臓器ごとに適したカプセル内視鏡の開発を目指す動きについて紹介する。

    連載の目次
  1. 【連載・目次】カプセル内視鏡,知られざる開発競争
  2. 【第1回・登場の経緯】カプセル内視鏡,軍事技術との意外なつながり
  3. 【第2回・日本の現状】国内でもカプセル内視鏡の利用開始は目前?
  4. 【第3回・最新の動向】各臓器専用のカプセル内視鏡の開発へ

【訂正】
記事公開当初,オリンパスメディカルシステムズのカプセル内視鏡について「今年5月に承認申請を行った」と記述していましたが,実際には承認申請の準備中でした。読者の皆様,関係者の皆様にお詫びして訂正したします。

小又 理恵子=日経メディカル別冊



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