マイクロソフト オンラインサービス事業部Windows Liveサービスグループディレクターの浅川秀治氏
マイクロソフト オンラインサービス事業部Windows Liveサービスグループディレクターの浅川秀治氏
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Windows Liveのサイトの一例。自分が好きなコンテンツを選択して一覧表示できる
Windows Liveのサイトの一例。自分が好きなコンテンツを選択して一覧表示できる
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 「Web 2.0」と呼ばれる新世代のWebサービスが急速に拡大している。その象徴的な存在として語られることが多い米Google Inc.の成長は,パソコン用OSの覇者である米Microsoft Corp.を脅かし始めている。

 対抗策としてMicrosoft社はWebサービスの強化を急いでおり,Web 2.0の要素を取り込んだ「Windows Live」日本語版正式サービスを2006年秋に開始する。国内でWindows Live事業を統括する,マイクロソフト オンラインサービス事業部Windows Liveサービスグループディレクターの浅川秀治氏に,Windows Liveの戦略や今後の展開などについて聞いた。


――Windows Liveは,ポータル・サイト「MSN」と何が大きく異なるのか。

浅川氏 MSNでは,ニュース,天気予報,地図情報,路線検索などマイクロソフトの提携企業がコンテンツを提供している。ニュースなら毎日新聞社といった具合だ。こうした意味で,MSNは「メディア・ポータル」だといえる。

 一方,Windows Liveはインターネット上に無数あるコンテンツの中から,ユーザーが見たいもの,使いたいものを自由に選んで表示できるサイトだ。具体的には,さまざまな企業がRSS配信するニュース記事へのリンクを一覧表示したり,「ガジェット(=ウィジェット)」と呼ばれるミニ・アプリケーションを組み込めるWWWサイトである。

 Windows LiveはHTTP,XML,JavaScriptといったインターネットの標準技術に対応している。このため,RSSで配信されているコンテンツなら,マイクロソフトと提携している,していないに関わらず,Windows Liveのトップ・ページに表示できる。さまざまな企業などが提供する情報を,いちいち個別のサイトにアクセスしなくても一覧表示できるので,特にビジネスマンにとっては便利だ。

――ユーザーから見れば,ポータル・サイトのようなものが2つあるというのは混乱すると思うが。

浅川氏 両者は使い方が異なるので,混乱はないだろう。MSNでは既に編集されたコンテンツを見たり,使ったりするのが主目的で,ユーザーはWWWサイトをカスタマイズできない。対して,Windows Liveは,RSS配信しているニュース・サイトを検索して,自分がWindows Liveのトップ・ページに表示したいコンテンツを選択する。Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)の技術を使っているので,コンテンツの表示位置もマウスのドラッグ操作だけで自由にカスタマイズできる。

――MSNとWindows LiveのいずれにもWebメール,検索,インスタント・メッセンジャー(IM)の各サービスが組み込まれているが,これらはどうなるのか。

浅川氏 両サイトに組み込まれているWebメール,検索,IMの基本部分は同じだ。現在ではデザインが異なるが,Windows Liveの正式サービスを開始する時点で共通化する。例えば,MSNの「Hotmail」は,Windows Liveの「Windows Live Mail」に一本化する。メール・ボックスの容量は,Hotmailでは標準で250Mバイトだが,Windows Live Mailではそれが2Gバイトに増える。Ajaxにも対応するので,ブラウザーの更新ボタンを押さなくても新着メールが表示されるようになる。

――米Google社や米Yahoo!社などもWindows Liveと同様の取り組みをしているが,競合他社と比較してマイクロソフトの強みは何か。

浅川氏 当社の強みは,Windows LiveというWebサービスだけでなく,OSやOfficeといったソフトウエア製品を自社で保有していることだ。例えば,Windowsの開発者の多くが,Windows Live用にガジェットを作成してくれれば,競合他社に比べてガジェットのラインナップは充実し,Windows Liveの魅力が増す。現在はWindows Live用と,「Windows Vista」のSideBar用,同じくWindows VistaのSideShow(Tech-On!の関連記事)用のガジェットはそれぞれ別個のSDK(software development kit)を使って開発する。しかし,近い将来はこれらのSDKを共通化する予定だ。そうなればWindows Live用に開発したガジェットを,SideBar,SideShow上で動作させることができる。

――Windows Liveのビジネス・モデルはどうなっているのか。

浅川氏 MSNとWindows Liveは,同一のビジネス・ユニットに属している。それぞれ独立採算ということはない。WWWサイトへのトラフィックは互いに融通し合う。
 Windows Liveのサイトにはバナー広告を貼る予定はないが,それに代わる広告の挿入は検討している。また,ユーザーがサイトに組み込みたいガジェットを検索する際に,ガジェットへのリンクを検索連動広告のように有料で掲載することなども検討している。