お決まりのジーンズと黒いタートルネックでWWDCの舞台に立ったSteve Jobs氏
お決まりのジーンズと黒いタートルネックでWWDCの舞台に立ったSteve Jobs氏
[画像のクリックで拡大表示]
新バージョンのiChatで,チャットの参加者(Apple社のWorldwide Product Marketing担当Senior Vice President,Philip Schiller氏)が,背景をフランスのルーブル美術館に設定
新バージョンのiChatで,チャットの参加者(Apple社のWorldwide Product Marketing担当Senior Vice President,Philip Schiller氏)が,背景をフランスのルーブル美術館に設定
[画像のクリックで拡大表示]
背景をジェット・コースターに変更
背景をジェット・コースターに変更
[画像のクリックで拡大表示]
Time Machineのデモの様子。ユーザーは,右下の矢印を操作して,過去のコンピュータの状態を再現する。時間軸(タイムライン)も表示する
Time Machineのデモの様子。ユーザーは,右下の矢印を操作して,過去のコンピュータの状態を再現する。時間軸(タイムライン)も表示する
[画像のクリックで拡大表示]
「Core Animation」を用いて開発したアルバム・アートのアニメーション
「Core Animation」を用いて開発したアルバム・アートのアニメーション
[画像のクリックで拡大表示]
オークションのWWWサイトで,ある項目を選択して,widgetに常時表示させるデモ
オークションのWWWサイトで,ある項目を選択して,widgetに常時表示させるデモ
[画像のクリックで拡大表示]

 米Apple Computer, Inc.,CEOのSteve Jobs氏は,同社の開発者向けイベント「Worldwide Developers Conference 2006」(WWDC) で基調講演をした。同社のパソコン「Macintosh」関連の話題が中心で,携帯型音楽プレーヤー「iPod」に関する話は一切なかった。講演の目玉は,2007年春ごろに出荷する予定の次世代OS「Mac OS X version 10.5」(開発コード名:Leopard)(発表資料その1その2)。まだ未公開の機能があると断った上で,Jobs氏と他のApple社の幹部はLeopardの新機能をいくつか紹介した。中でも注目を集めたのは,チャット機能「iChat」のマルチメディア対応の強化や,ユーザーの情報をバックアップする新機能「Time Machine」である。

 Apple社は,米Microsoft Corp.の次世代OS「Windows Vista」の出荷がずれ込んでいることを皮肉を込めて語った。Jobs氏は,VistaとMac OS Xの機能がよく似ていることを示すプレゼンテーションの後,「研究開発に50億米ドルもかけても,我々やGoogle社の真似をしただけ。結局,お金が全てではない」とした。同氏は,2006年第2四半期に米国市場でMacintoshは約17%成長し,同時期のWindowsパソコンの成長率の7%を上回ったと主張した。会場に集まったMacの開発者に,Mac OS X市場の未来は明るいとアピールした。

チャット中に背景の動画を変える


 参加者の大きな反響を呼んだのは,Leopardと同時に出荷する予定の動画チャット・ソフトウエア「iChat」の新バージョンだった。これまで静止画を撮影するソフト「Photo Booth」で実現していた画像処理機能(Tech-On!関連記事その1)を,iChatにも搭載し,リアルタイムの動画でも利用できるようにする。さらに,チャットの参加者が,自分が写っている画面の背景を変更できるようにした。静止画だけでなく動画にすることもできる。

 こうした機能を実現するには,高機能のマイクロプロセサやグラフィックス処理機能が不可欠と思われる。ただし今回のWWDCでは,Leopardが要求する最低限のハードウエア構成や,PowerPC系のマイクロプロセサを用いた以前のMacintoshで動作するかどうかといった情報は公開されなかった。

アニメーションで過去に遡るバックアップ機能


 Leopardが備える「Time Machine」と呼ぶバックアップ機能は,ユーザーが扱った全ての情報を,外付けのHDDや,Mac OS Xが動作するサーバー機に簡単に保存するという。ユーザーがある情報を失ったと気づいた後で,その情報を含んだ過去の状態を探したり,その情報を取り戻すデモを見せ,参加者の大きな反響を呼んでいた。

 Time Machineが用いるアニメーション表示は,Leopardが備える「Core Animation」と呼ぶ機能を利用する。Apple社によれば,Core Animationではアニメーションを複数のレイヤに分けて制御するという。この機能を使うと,アニメーションのプログラムの規模を減らせる。従来のOS X 10.4(旧開発コード名:Tiger)でアニメーションを開発すると4000行必要だったのが,1/10の400行で実現できるという。

 このほかに注目された機能に,「Web Clip」がある。Mac OS Xが備える「widget」と呼ぶ機能を利用するもので,ユーザーはあるWWWサイトの一部分を選択し,その部分のみを表示するwidgetを簡単に設定できるという。たとえば,オークション・サイトの特定の販売項目を選択して,価格の変化などをユーザーが決めたwidgetに表示させることができる。この機能は,2006年3月にMicrosoft社のCTO,Ray Ozzie氏が紹介した「Live Clipboard」という機能に似ている(Tech-On!関連記事その2)。

 このほかLeopardには,リモコンで操作できるユーザー・インタフェース「Front Row」の新しいバージョンを標準添付する。ただし,Front Rowの新機能は今回公開しなかった。Apple社は,Leopardのプレビュー版のコピーを,WWDCに集まった開発者に配付した。