トヨタ自動車専務取締役の鈴木武氏
トヨタ自動車専務取締役の鈴木武氏
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 トヨタ自動車は,2006年度第1四半期(2006年4~6月)の連結決算を発表した。売上高は5兆6381億円,営業利益は5124億円。前年同期比でそれぞれ13.2%,26.5%増加した。「(通期で)営業利益2兆円も見えてきた」(同社専務取締役の鈴木武氏)が,業績予想の上方修正はしないという。

国内販売維持でスケールメリットを確保

 グループ全体(トヨタ/レクサス,ダイハツ,日野)の販売台数は,北米・欧州・その他市場で増加したものの,日本・アジア市場では減少した。日本市場の販売台数は54万3000台と,前年同期の55万台からやや落とした。営業利益は2930億円で,前年同期の1884億円に比べて大幅に増えた。輸出台数の増加と円安の進行が大きく影響した。ただし,日本市場自体はモデルミックスの悪化が進んでおり,利益を出しにくい市場になっているが,スケールメリットを享受するため,販売台数の維持に力を注ぐ。軽自動車を除く市場では,全体の販売台数が減少する中,シェアは46.5%と前年同期比で1.5%増えた。

北米のインセンティブを圧縮

 北米市場の販売台数は,74万7000台と,前年同期の64万1000台から大幅に増えた。「Lexus LS」や「Tundra」が好調だったという。北米市場でも燃料価格の高騰を理由にモデルミックスが悪化しているものの,1台当たりの販売促進費(インセンティブ)の額が750米ドルと,前年同期の1090米ドルに比べてかなり減ったため,わずかながら増益を達成した。2006年度第1四半期の営業利益は1401億円,前年同期は1378億円である。

「Lexusが認知され始めた」欧州市場

 欧州市場も躍進した。販売台数は30万8000台と,前年同期の25万6000台を上回っている。営業利益は365億円で,前年同期(167億円)の約2.2倍。新型車の「Yaris(日本名ヴィッツ)」や「RAV4」が販売台数の増加に貢献した。「Lexus IS」も好調だったという。「Lexusというブランドが認知され始めた」(鈴木氏)。記者団からは「Lexusの生産拠点を欧州に新設することは検討しているか」という質問があったが,今のところ検討していないという。

アジア市場では販売台数が減少

 一方で,アジア市場では苦戦を強いられた。販売台数は19万3000台,前年同期の22万9000台から3万台落とした。営業利益も300億円と,前年同期(398億円)比で減益となっている。台湾やインドネシアで伸び悩んだのが原因。通期の見通しでも,アジア市場だけは販売台数の減少を見込んでいる。世界戦略車「IMV」の輸出事業は好調。

南アの生産能力を増強

 その他(アフリカ・中南米・豪州)市場では,販売台数は増加したものの,減益を計上。アフリカは,南アフリカの生産拠点で能力増強のための投資を行ったほか,IMVの輸出で利益を確保できていない状況。豪州は「Camry」がモデルチェンジを迎えるため,生産台数を抑えているという事情があり,やはり利益を圧迫している。中南米はIMVの生産が増えており,大幅な増益となった。全体としては前述の通り,減益である。

上方修正には慎重,品質問題で新たな費用は「発生しない」

 営業利益の増減要因としては,まず減益要因は「研究開発費の増加」が275億円,「減価償却費および設備関連費用」が154億円,「労務費の増加」が125億円,「業容拡大による諸経費の増加」が173億円で計727億円。増益要因は「為替変動の影響(円安)」が1000億円,「営業面の努力」が600億円,「原価改善の努力」が200億円で計1800億円。結果,1073億円の増益となった。部材価格高騰の影響が大きいのはアルミニウムや銅だという。

 通期連結決算の見通しは,売上高が22兆3000億円,営業利益が1兆9000億円,純利益が1兆3000億円で,期首の発表から変更はない。記事冒頭にある鈴木氏の発言の通り,通期の営業利益2兆円を達成しそうな勢いだが,まだ第1四半期の決算が出たばかりということもあり,上方修正には慎重な姿勢を見せた。

 一連の品質問題が販売に与える影響を問われると,鈴木氏は「今のところ感じていないが,将来のことは分からないので,見守りたい」とコメント。再発防止の取り組みにかかる費用は既に盛り込んでいるため,新たに費用が発生することはないとした。

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