総務省の情報通信審議会は2006年8月1日に開催した総会で,「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」の第3次中間答申を了承した。「2005年7月の第2次中間答申(Tech-On!の関連記事)では2011年のアナログ放送停波を確実にするための課題を明確にしたが,今回の第3次中間答申はそれらの課題を解決する方向性を示した」(総務省)と位置付ける。

 この答申では,地上デジタル放送のコピー制御,いわゆる「コピー・ワンス」の取り扱いについて触れた。現在のデジタル放送の番組はすべて「1世代のみコピー可」とするコピー制御信号(CCI)を多重しているが,これを「EPN(encryption plus non-assertion)」に変更する方向で検討することを求めた。併せて,この検討状況を2006年12月までの可能な限り早い時期に公表することとした。

 2005年7月の第2次中間答申で情報通信審議会は,著作権保護の運用を見直していくことが必要とし,関係者による検討の場を設けるべきとまとめた。これを受けて,情報通信審議会 情報通信政策部会の「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」がコピー・ワンスの見直しに関する議論を進めてきた。この検討委員会の主査を務める慶應義塾大学の村井純氏は総会の場で,放送における著作権保護の技術やルールは「民間で決定することが基本だが,視聴者を含めた関係者の意見を反映できる必要がある。行政は,技術やルールを決定するプロセスの透明性を確保する部分に一定の役割を果たす余地がある」と説明した。

 答申では,デジタル放送の著作権保護について,総務省の枠を越えた検討が必要との考えも示した。「放送事業者,受信機メーカーのみならず,著作権にかかる行政,消費者,権利者など幅広い関係者」が参加する検討の場の設定を要請した。コンテンツの権利者などの意図に反した複製を行う者に関する捜査や罰則のあり方,コンテンツの内容と保護方法とのバランスに関する判断プロセスのあり方など,様々な観点からデジタル放送の著作権保護のあり方を検討していく必要があるとの考えに立ったものである。

■コピー・ワンス関連のNEブログ
「コピー・ワンス」論争,このままでは皆が不幸になる(2006年7月6日)