図1 第1四半期決算を発表するNECエレクトロニクス 執行役員 兼 財務本部長の佐藤博氏
図1 第1四半期決算を発表するNECエレクトロニクス 執行役員 兼 財務本部長の佐藤博氏
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 NECエレクトロニクスは,2006年度第1四半期(2006年4~6月期)の決算を発表した(ニュース・リリース)。売上高は前年同期比13.1%増,前期比3.0%減の1652億円。営業損益は58億円の赤字となった。

 同社にとって,この赤字はほぼ織り込み済みといえる。2006年4月に発表した2006年度の業績見通しで,同社は上半期に50億円の赤字を見込んでいた(Tech-On!関連記事1)。今回の赤字幅は,前年同期比で40億円の改善,前期比では実質的に約20億円の改善に当たる。「2006年度通期での黒字化に向け,着実に成果があがっている」(NECエレクトロニクス 執行役員 兼 財務本部長の佐藤博氏)として,通期の業績見通しは据え置いた。

 主力分野のうち,前期比で売り上げを伸ばしたのは「多目的・多用途IC」と「ディスクリート・光・マイクロ波」の2分野である。前者はフラッシュ内蔵マイコンの需要増がけん引し,前期比20%の増収。後者は携帯機器向けの小型液晶ドライバLSIの需要増により同3%の増収となった。

 これに対して,残る4部門の「通信機器」「コンピュータおよび周辺」「民生用電子機器」「自動車および産業」はいずれも減収となった。携帯電話機向けベースバンドLSIやDVDドライバLSI,大型液晶ドライバLSIなどの売り上げが減少したことが響いた。

Q2の業績は新型ゲーム機が引っ張る

 直近の2006年度第2四半期(2006年7~9月期)は,SoC(system on a chip)関連製品で前期比20%弱の売り上げ増を見込む。この増分の8割を占めるのが,任天堂の新型ゲーム機「Wii」に供給するとみられる「新型ゲーム機器向けLSI」(同社)である(Tech-On!関連記事2)。同社は,山形の300mmウエハー工場の生産能力を現状の6000枚/月から第2四半期末までに1万1000枚/月に増強する予定だが,この生産能力の約70%を新規ゲーム機器向けLSIに当てる。

 その他のSoC分野では,携帯電話機向けベースバンドLSIが依然として減収となる見込みである。このほか,マイコン関連製品で同5%の増収,ディスクリート製品で同3~4%の増収を見込む。

黒字化に向けた三つの施策

 NECエレクトロニクスは,2006年度通期の業績見通しで,売上高は前年度比9.1%増の7050億円,営業損益は同407億円改善となる50億円の黒字を見込む。同社は黒字化に向けた施策として,(1)受注および売り上げの拡大,(2)生産能力増強と稼働率向上による原価率の改善,(3)下期以降の利益率の高い製品の強化を挙げている。「いずれも順調に進捗している」(同社執行役員の佐藤博氏)。
 
 このうち(1)については,特に海外市場への販売を強化するという。同社は現在,W-CDMAおよびGSM/GPRSの両方式に対応したデュアル・モード対応ベースバンドLSIを開発しており,海外市場向けに販売するSoCの目玉の一つにしたい考えだ(Tech-On!関連記事3)。(2)については,第1四半期の投入ベースでの工場稼働率は90%を超える値で推移しており,さらなる稼働率向上を目指すという。(3)については,同社の佐藤氏は「利益率が高い製品ポートフォリオを社内で検討中」と表明するにとどまった。

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図2 プラットフォーム別には,SoCプラットフォームが前期比8%の売り上げ減
図2 プラットフォーム別には,SoCプラットフォームが前期比8%の売り上げ減
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図3 第2四半期では,新型ゲーム機向けLSIで前期の売り上げ減を取り戻す
図3 第2四半期では,新型ゲーム機向けLSIで前期の売り上げ減を取り戻す
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