決算発表に臨むKDDI 代表取締役社長 兼 会長の小野寺正氏
決算発表に臨むKDDI 代表取締役社長 兼 会長の小野寺正氏
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 KDDIは,2006年度第1四半期の連結決算を発表した(発表資料)。売上高は前年同期比11.8%増の7984億円,営業利益は前年同期比38.8%増の1219億円と好業績を上げた。

 好調の要因は,売上高の80%を占める移動通信事業(auとツーカー)にある。営業利益は1297億円で,同31.4%増だった。

 KDDI 代表取締役社長 兼 会長の小野寺正氏によれば,移動通信事業が好業績を上げた理由は,契約の純増数が予想を超えて高かったことだという。新規加入者が増える「3月商戦」に当たる2006年3月の純増数は約40万件(ツーカーからauへの移行を除く),純増シェアは約45%だった。その後の4月~6月も純増数は約20万件/月,純増シェアは50%前後で推移した。さらに,解約率が同0.22ポイント改善して1.04%と「想定以上に低くなった」(小野寺氏)ことも利益を押し上げた。

 「メタルプラス」「ひかりone」などの固定通信事業の売上高は,パワードコムの買収効果などにより同23.3%増の1788億円となった。営業損益は99億円の赤字で,前年同期から17億円改善した。

新プラットフォームで端末の開発コストをさらに安く

 KDDIは収益確保のため,携帯端末の調達価格をさらに引き下げることを目指す。

 理由の一つは,ARPU(1契約当たりの月間平均収入)が減少傾向にあることだ。同社のARPUは2005年第2四半期からじりじりと減少しており,今期は前年同期4%減の6810円だった。

 高い収益を維持するには,販売奨励金(現在は端末1台当たり平均3万8000円)を下げるか,携帯端末の調達価格を下げる必要がある。このうち販売奨励金は,2006年10月の番号ポータビリティ導入を控えて「基本的にはほぼ横ばいで推移させる」(小野寺氏)考え。このため端末の調達価格を引き下げることにした。

 KDDIは以前から,端末の開発費の80%を占めるソフトウエア開発費を抑えるため,米QUALCOMM社のMSMチップセットとミドルウエアのBREWをベースとする共通プラットフォーム「KDDI Common Platform」(KCP) を構築している。同社はKCPを基に,各端末メーカーに対してそれぞれ異なるアプリケーション・ソフトウエアの開発を委託し,そのソフトウエアを端末各社で共有させている。これにより「端末の開発コストは着実に減少した」(小野寺氏)。

 KDDIはさらに端末のコストを押し下げるべく,MSM7500チップセットを対象に,共通範囲をOSやミドルウエアにまで広げた新たなプラットフォームの開発を表明した(Tech-On!関連記事)。同プラットフォームを採用した製品の投入は2007年秋~冬になるもようだ。

 NTTドコモやボーダフォンは,端末コストの削減のため,海外メーカー製の低コスト端末の調達にも力を入れる。これに対して,KDDIは2005年12月に韓国Pantech&Curitel Communications社製の端末を発売して以来,海外メーカーから端末を調達していない。実際KDDIの小野寺氏は,海外メーカー製の端末の採用には消極的な考えを示す。「日本のユーザーは,他の地域のユーザーと比べてソフトウエアに極めて高い完成度を求める。海外メーカーは,そのあたりのギャップを分かってくれないと・・・」(小野寺氏)。逆に同氏は,日本市場の中で完成度を高めたKCPやKCP対応ソフトウエアを,海外の事業者にも販売できるとみている。これにより,端末の開発コストをさらに引き下げたい考えだ。

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