いよいよ「Nike+iPod Sport Kit」の分解作業に取り掛かる。センサ・モジュールと無線受信機の筐体をそれぞれ開けて,どんな部品を使っているか確認を進めた。
まずはセンサ・モジュールの分解を始める。「一見したところセンサ・モジュールの方が,筐体を開けるのが容易そうですね」(分解を手掛けた技術者)との判断からだ。それでも靴底に差し込んで利用するためか,頑丈な作りである。カッターナイフを利用して約15分をかけてプラスチック製の筐体を切り開けると,センサ素子と基板,ボタン型電池が現れた。iPod本体など米Apple Computer, Inc.が手掛ける製品は,いずれも分解するのが極めて難しい構造になっているという。
センサ素子には,エレクトロニクス製品で広く使われている電子ブザー向けの「振動板」が使われていた。振動板は金属板に圧電セラミックスを張り合わせたもので,通常は交流電流を印加して音を発生させる。しかしNike+iPod Sport Kitでは,これをセンサ素子として使う。振動板に圧力が加わると圧電効果によって電圧が発生するが,センサ・モジュールはこの情報を検知して「足が着地した」と認識するわけだ。「振動板をセンサ素子として使う事例はゼロではないが,そう多くない。原始的なセンサの一つと言っていい」(前出の技術者)。
基板を詳しくみると「nRF 2402G 0612AN」と刻印されたチップが搭載されている。調べてみると,ノルウェーNordic Semiconductor ASA製の無線送信IC「nRF2402」である(nRF2402の製品ページ)。2.4GHzを使う超低消費電力の無線チップで,無線マウスなどに採用されている。Nordic Semiconductor社は,カナダDynastream Innovations Inc.のPAN(personal area network)向けプロトコル・スタック「ANT」を提供していることでも知られている。
センサ・モジュールに続いて無線受信機の分解を進めていく。筐体を開けると,やはりNordic Semiconductor社の無線チップが現れた。興味深いことに,搭載していた無線チップは受信専用のものではなく,無線送受信IC「nRF2401A」であった( nRF2401Aの製品ページ)。(詳細は下記の写真を参考)
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