HP社の新しいコンセプトの無線タグ技術「Memory Spot」
HP社の新しいコンセプトの無線タグ技術「Memory Spot」
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紙の文書に貼り付けたMemory Spotのチップの情報を,リーダー/ライターで読み出している様子。
紙の文書に貼り付けたMemory Spotのチップの情報を,リーダー/ライターで読み出している様子。
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メモリ容量が256kビットの試作チップ写真(写真:HP社)
メモリ容量が256kビットの試作チップ写真(写真:HP社)
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写真にMemory Spotのチップを貼り付けた応用例
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HP社が提示した応用例。カード・ゲームの情報をチップに格納したり(左),医療現場で活用することを想定して患者の情報を格納したベルト(中央),ゲーム・ソフトウエアを格納したチップを貼り付けたカード(右)である。
HP社が提示した応用例。カード・ゲームの情報をチップに格納したり(左),医療現場で活用することを想定して患者の情報を格納したベルト(中央),ゲーム・ソフトウエアを格納したチップを貼り付けたカード(右)である。
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 米Hewlett-Packard Co.(HP社)は,「Memory Spot」と呼ぶ新しいコンセプトの無線タグ技術を開発した。既存の無線タグ技術に比べてデータ伝送速度を高め,チップに集積するメモリを大容量にしたのが特徴である(発表資料)。例えばMemory Spotでは約10Mビット/秒のデータ転送速度や,1Mビット以上のメモリ容量を実現できるとしている。現行の無線タグの多くはデータ伝送速度が10k~数百kビット/秒で,メモリ容量は数kビットである。

 通常,無線タグでは識別番号(ID)だけをチップに格納するが,HP社が開発したMemory Spotでは写真や映像,音声,文字,プログラムといったデータそのものをチップに格納する。このため物体に無線タグを貼り付けてその関連情報などを取り出す用途において,ネットワークに接続したりデータベースを用意したりする必要がなく,システム構築が容易になるとしている。HP社はMemory Spotのチップを試作しており,具体的な適用例を提示している。例えば紙の文書や写真に貼り付けたMemory Spotのチップに文書や写真の電子データを格納する,写真に貼り付けたチップに撮影時の音情報を格納する,雑誌に貼り付けたチップに追加情報や音声による解説情報を格納する,といった使い方である。

 HP社はMemory Spot技術を用いたチップとして,メモリ容量が256kビットと4Mビットの2種類を試作済み。いずれも180nmルールのCMOS技術で製造する。集積するメモリはNAND型フラッシュ・メモリである。アンテナはチップに集積しており,寸法は256kビット品で1.4mm×1.4mmである。通信距離は「near contact」としており,電気的な接触は不要であるもののリーダー/ライターがチップに接触するほど近づける必要がある。10Mビット/秒のデータ伝送速度を実現するために,無線周波数として2.45GHz帯を適用した。「既存のRF IDタグは,あくまでバーコードの置き換えを狙ったもの。Memory Spotとこうしたタグはすみ分けられる」(Hewlett-Packard Laboratories, Vice President and Associate DirectorのHoward Taub氏)としている。

 Memory Spotの開発は,HP社の研究部門のHewlett-Packard Laboratoriesが手掛けた。このため事業化についての具体的なスケジュールは未定だが「HP社の事業部門や社外などと提携して技術を移管していく」(HP社)としており,数年以内の実用化を目指す意向である。