NECCの舞台上に立ったNicholas Negroponte氏
NECCの舞台上に立ったNicholas Negroponte氏
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500MHz周波数で動作する米AMD社のマイクロプロセサ「Geode」を搭載したメイン・ボード。128MバイトのDRAMや512Mバイトのフラッシュ・メモリも搭載する。
500MHz周波数で動作する米AMD社のマイクロプロセサ「Geode」を搭載したメイン・ボード。128MバイトのDRAMや512Mバイトのフラッシュ・メモリも搭載する。
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1台の$100 Laptopを通じて,4台がWWWサイトを表示している調子
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分散型音楽のデモ環境
分散型音楽のデモ環境
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 米国サンディエゴ市で2006年7月5日から7月7日まで開催した教育向けコンピューティングに関する会議「National Educational Computing Conference 2006」(NECC)で,発展途上国での教育用途に向けた低価格ノート・パソコンの開発を手掛ている非営利団体米One Laptop per Child(OLPC)は,「$100 Laptop」(Tech-On!関連記事)の動作する試作機を初めて展示した。同イベントの基調講演でOLPCの設立者兼ChairmanのNicholas Negroponte氏は,同氏が関わり1990年代後半に行ったインドのカシミール州での通信プロジェクトの経験から,「教育向けコンピューティングを発展途上国に普及させるためのカギは通信インフラではない」と指摘した。「民間企業による通信インフラの整備は進んでいる。問題はノート・パソコンを浸透させられるかだ」(Negroponte氏)。

 OLPCが展示したノート・パソコンの試作機は,Linuxを搭載していた。当初は筐体に収めたものを展示する予定だったが,同試作機はエジプトから輸送する途中で米国の通関手続きに手間取ったため,展示に間に合わなかったという。価格を100米ドルに抑えるために,$100 Laptopには太陽の下で読める反射型液晶パネルを搭載する。1200x900画素で200dpi(dots per inch)のモノクロ液晶パネルと1024x768画素のカラー液晶パネルを検討している。ただし,会場ではこのディスプレイを確認できなかった。

 OLPCは,$100 Laptopに搭載する技術の中でも,無線LANを採用するメッシュ・ネットワーク技術を強調する。この技術を使うことで,例えば$100 Laptopのユーザーは,「現在WWWサイトを見ている」といった状態を他のユーザーに伝えられる。こうした機能は,例えば学生たちが共同で勉強することを助けるという。NECCでは,ある教科を学習するWWWサイトを見ているユーザーAが,この情報を他のユーザーBに転送して,ユーザーBが同じWWWサイトで学習する,といった実演を披露していた。

このほかメッシュ・ネットワーク技術を使って4台のパソコンを連携させ,音楽を再生するデモを行った。各パソコンは音楽を再生するために,「Csound」というオープンソースのシンセサイザー・プログラムを搭載し,それぞれ異なる楽器の演奏を担う。4台のパソコンの中,1台のパソコンがマスター担当で,他のパソコンに必要な音楽データを転送した。再生した音声は玩具というレベルではなく,十分きれいな音質だった。$100 Laptopを組み合わせてこうした分散型音楽再生ができるようにCsoundを変更したという。

 $100 Laptopの開発計画によると,2006年第4四半期に開発者向けの試作機を出荷する。2007年第2四半期にアルゼンチンやブラジル,ナイジェリア,タイ向けの量産を開始する。2007年中に500万台~1000万台を製造する予定である。2008年には量産規模を5000万台~1億5000万台まで増やす。2007年中の価格は138米ドルにし,2008年末までに100米ドルまで下げると見込んでいる。2010年までに,価格を50米ドルまでに下げることを目指す。