「第13回東京国際ブックフェア2006」が2006年7月6日,東京ビッグサイトで開幕した。出版社が書店の仕入れなどに向けた展示を行ったり,割引価格で本を販売するほか,作家のサイン会やトークショーも催される。今年は史上最多の世界30カ国から750社が出展,5万3000人の来場を見込んでいる。会期は2006年7月9日まで。


学研科学大賞を受賞した「羽ばたく翼発電」
 ブックフェアとはいっても,単に本が並ぶだけにはとどまらない。例えば,「大人の科学」や「科学のタマゴ」を発行する学習研究社では,ブースのあちこちで科学を利用した玩具などを展示している。羽ばたく翼を使って風力を電気エネルギーに変換し,ミニチュア列車を走らせる様子などが人目を引いていた。

 出展しているのは出版社ばかりではない。日立製作所は,電子カタログ流通ソリューションを参考出品した。無料配布や雑誌付録のDVDへの収録を想定したもの。再生したDVD画面上のバナーや広告文をクリックするとコンテンツの試聴ができ,さらにワン・クリックで販売サイトにもつながる仕組みだ。インターネットのストリーミング音楽再生などと違って,サーバからダウンロードするのではなく,試聴用コンテンツをDVDに収録しているため,再生前の待ち時間を短くできる。DRM技術に対応しており,ライセンス・キーをダウンロードするだけで試聴できるため,運用側としても高負荷のダウンロード用サーバが不要になる利点がある。2006年秋以降に凸版印刷と共同でトライアルを実施し,製品化を目指す。

 大日本印刷は,同社が「ものづくりの原点」と位置づける,活版印刷の活字の直彫りを実演展示した。デモンストレーターは,同社の市谷工場内で長年,活字直彫りを一手に引き受けてきた中川原勝雄氏。一心に両手の指先を動かし,特殊なメガネのようなもので自分のその指先を見つめる様子を,大勢の観客が見守った。活版印刷の活字は大半が母型と呼ばれる型から鋳造されるが,原稿によっては珍しい文字や記号など,母型のない文字が必要になることもある。こうした急なニーズに応えてきたのが,活字を鉛や木の棒の先端に直接彫刻していく直彫り技術だ。小さな文字の線の太さや字面,バランスを考慮しながら逆字で彫り上げる,まさしく職人芸ともいえるもので,こうした直彫りのできる職人は,今や日本にわずか数人という。


一心に彫り続ける中川原氏(左)と同氏の彫り上げた活字(右)

 基本的には本棚が並ぶことの多いブックフェアにあって,ムサシの出品したいかめしい装置も目を引いた。「自動ブックスキャナ」というもので,その名の通り,本をスキャンする装置。貴重な文献を画像データにして公開するなどの用途に向ける。真空吸引によってページをめくるので,手間が省けるとともに,人の手垢などがつかないため本を守ることにもなるという。ページをめくる機構の上部に3枚の鏡とカメラが備え付けてあり,見開きページを順々に撮影していく。スキャン速度は1時間で1200ページ程度。価格は2500万円だ。図書館などを中心に2005年秋より販売しており,海外では30台程度が稼動している。日本で稼動しているのはわずかに2台。1台は科学技術振興機構に納入されたという。