米IDT社のPPS
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携帯電話基地局でのPPSを用いた場合の構成
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PPSのブロック図
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 米Integrated Device Technology,Inc.(IDT社)は,第3~第4世代の携帯電話や無線ブロードバンド向け基地局に用いる「PPS(pre-processing switch)」を開発した。特定用途向け標準LSI(ASSP:application specific standard product)の一種で,複数のDSP間のスイッチとDSPの負荷を軽減するプリ・プロセサという二つの役割を持つ。IDT社によれば,現行の基地局向けDSPの処理負荷を2割軽減でき,その分高速通信への対応が可能になるという。現在サンプル出荷中で,2006年11月の量産開始を予定している。

 W-CDMAなど第3世代携帯電話用基地局では,ベースバンド処理用に複数のDSPを用意し,それぞれにW-CDMAの変調処理や拡散処理など異なる役割を持たせている。これまで,DSP間はスイッチと,バッファ用のメモリでつながれていた。

 PPSでは,こうしたスイッチやメモリ,さらに,ベースバンド処理とRF回路の間で複数のユーザーの通信信号を多重するためのASICまたはFPGAの機能を一つのチップ上に集積した。スイッチ用のインタフェースには,Serial RapidIOを採用し,米Texas Instruments Inc.などのDSPとの接続性を確保した。

 DSPの負荷を軽減するためだけでなく,PPSは,DSPで処理していた比較的単純で繰り返しの多いデータ処理をPPS側で実行する。具体的には,パケットの多重や分離,同報送信(対象はDSP),DMA(direct memory access)機能,メモリ中のデータ・フォーマットの変換などの処理を肩代わりする。「これらの処理をDSPにさせるのは資源の無駄使い。これまでDSP中で5~6回も繰り返し計算をしていたこうしたデータ処理を,PPSではパイプラインを利用して1回で終わらせるため,遅延時間も削減できる」(IDT社 IDT Flow-control Management Division,Senior Product ManagerのBill Beane氏)。

 ASSPのパッケージの寸法は,27mm角。米国でのサンプル価格は1個125米ドルである。