東レは2006年6月16日,炭素繊維複合材料(CFRP)を使って複雑な形状の製品を大量生産する技術を開発したと発表した。これにより,自動車部品やロボットの部材,ノートパソコンの筐体など,CFRPの用途を拡大できるほか,製造コストの低減も図れるという。CFRPの材料設計から成形,組み立てまでを見直すことで,プラスチックや金属に匹敵する設計の自由度と量産性を実現した。

 これまでCFRPを使う際は,異素材と一体のものとして設計/成形/生産していたため,複雑な形状の成形品を大量に造るのが難しかった。それに対して新技術では,成形品を形状や機能ごとに部品単位で分割して設計する。強度が必要な部分にCFRPを適用し,これに異なる形状/機能の部品を一体化させる方法を採る。

 成形技術については,金属向けのプレス成形法を応用した。これは,一方向プリプレグ(炭素繊維を一定の方向に配列し,エポキシ樹脂を含ませたシート状の中間基材)を積層した後,短時間で所定の形状にプレスするもの。従来比10倍以上の速さで固まる新開発のエポキシ樹脂を使うことで,材料の配置から脱型までにかかる時間を3分以内に縮めた。このエポキシ樹脂を含んだプリプレグは,厚さが1mm以下。積層構成の最適化により,製品の薄さと剛性を両立できる。

 組み立て技術としては,CFRPとプラスチックなど異素材を熱溶着する技術を開発。射出成形機にCFRPを配置し,熱可塑性樹脂をインサート成形する。これにより,組み立て時間を短縮できる。

 同社は今回,これらの技術を使ってノートパソコンの筐体を製造した。天板や底面など平らな部分にCFRPを使い,外枠など複雑な形状の部分は射出成形することで,マグネシウム合金製のものよりも軽量/薄型化できたという。組み立てにかかった時間は,1分以内だった。