3924人(主催者の除く)が参加した「第5回産学官連携推進会議」。参加者の内訳は,産が737人,学が1573人,官が938人,そのほか・不明が676人
3924人(主催者の除く)が参加した「第5回産学官連携推進会議」。参加者の内訳は,産が737人,学が1573人,官が938人,そのほか・不明が676人
[画像のクリックで拡大表示]
「いい知恵を持って大臣室に殺到して」と語る松田大臣
「いい知恵を持って大臣室に殺到して」と語る松田大臣
[画像のクリックで拡大表示]

 2006年6月10日に始まった「第5回産学官連携推進会議」の基調講演で,内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の松田岩夫氏は,2006年3月に閣議決定した第3期科学技術基本政策や,5月23日に提議されたイノベーション創出総合戦略の骨子を解説した。いずれも,内閣総理大臣の小泉純一郎氏や内閣官房長官の安倍晋三氏,日立製作所 会長の庄山悦彦氏らが参加する総合科学技術会議が検討してきたものである。

 このうち,第3期科学技術基本政策は1995年に制定された科学技術基本法に基づき,2006年度から2010年度までの日本の科学技術の基本計画を示したものである。第1期と第2期の基本政策を通じて基礎固めはできたとし,第3期では人材強化に力を入れる。松田氏は,天然資源の少ない日本が成長を続けるためには「人の活躍にかかっている」と力説,個人の能力が発揮できるような人材育成の環境づくりの重要性を説いた。若手研究者や女性研究者の活躍の促進,外国人やシニア研究者の活用,競争環境の強化,子供たちの科学技術への関心の喚起など,さまざまな手を尽くして活性化を図る。

 具体的な支援例として,九州大学の「次世代研究スーパースター養成プログラム」を挙げた。国内外の若手研究者を公募し養成,新しい分野のリーダーとして活躍してもらうことを期待するプログラムである。この事例を含め,2006年度は9件を採択したという。女性研究者についても10件の提案を採択,研究と出産・育児を両立できるような環境づくりを支援する。

 イノベーション創出に向けた取り組みの目玉は,「世界トップレベルの研究拠点を,30作ることを目標にする」(松田氏)こと。この研究拠点では,能力主義に基づいた研究責任と報酬を与え,世界各地から研究者を受け入れるように英語での研究環境を整えるという。海外の参考例として,生物工学のStanford大学「BIO-X」,ロボット工学のCarnegie Melon大学のRobotics Instituteなどを挙げ,「どこに何を作ればいいか,いい知恵を持って大臣室に殺到してほしい」(松田氏)と呼びかけた。

 このほか10年以上先のイノベーションの種に投資する科学技術振興調整費や,小中高の理数教育強化など長期的な強化策も紹介しつつ,「日本発のイノベーションを次々に世界に送り出したい」と締めくくった。