エイサーのHD DVD-ROM内蔵パソコン「Aspire 9800」。20.1インチ型と巨大な液晶を採用した。隣にある15.4インチ型モデルと比べると、その大きさが分かる
エイサーのHD DVD-ROM内蔵パソコン「Aspire 9800」。20.1インチ型と巨大な液晶を採用した。隣にある15.4インチ型モデルと比べると、その大きさが分かる
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アスーステックのHD DVD-ROM内蔵パソコン「W1J」。背面を炭素繊維で加工するなど、きょう体のデザインにもこだわっている
アスーステックのHD DVD-ROM内蔵パソコン「W1J」。背面を炭素繊維で加工するなど、きょう体のデザインにもこだわっている
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アスーステックが開発中のデスクトップ内蔵型Blu-ray Discドライブ。2006年12月に発売予定
アスーステックが開発中のデスクトップ内蔵型Blu-ray Discドライブ。2006年12月に発売予定
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ベンキューが開発中の外付け型Blu-ray Discドライブ。2006年9月に発売予定
ベンキューが開発中の外付け型Blu-ray Discドライブ。2006年9月に発売予定
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 台湾・台北市で開催中の「COMPUTEX TAIPEI 2006」会場では、いくつかの大手パソコンメーカーのブースで次世代光ディスク関連の展示がみられる。各社の担当者に話を聞いてみると、どうやら「将来性がありそうなのはBlu-ray Disc(BD)だが、今製品を作るとなるとHD DVD」という構図になっているようだ。各社の製品を紹介しながら、その背景を見ていこう。

先行するHD DVD搭載パソコン、エイサーなど展示


 台湾メーカーで最も対応が早いのはエイサーだ。AV機能を強化したノートパソコンの最上位機「Aspire 9110」「同 9510」「同 9800」に、東芝サムスン ストレージ・テクノロジー(TSST)製のHD DVD-ROMドライブを搭載している。特にAspire 9800は1680×1050ドット表示の20.1インチ型液晶ディスプレイを備え、存在感のある製品になっている。CPUはCore Duo T2500(2GHz)、メインメモリーは2GB、内蔵HDD容量も240GBと盛りだくさん。欧州やアジアを中心に広がりを見せている地上デジタル放送方式「DVB-T」とアナログ放送のチューナー回路を内蔵するなど、日本メーカーも顔負けの高性能ぶりだ。

 会場に設置してあるデモ機では、HD DVDの映像ソフトをコマ落ちなく再生できることをアピール。それに加え、来場者に大口径の密閉型ヘッドホンを装着してもらい、サラウンド出力の音声と高解像度の映像をパソコンで楽しめることを体感させることを主眼としていた。

 同社ではこの3製品を、既に欧州市場を中心に発売済み。アジア市場でも順次展開を進めていくとしている。「現在はまだこの3機種だけだが、今後はノートパソコンの上位モデルすべてにおいて、HD DVDドライブを標準搭載する方向で準備を進めている」(エイサー説明員)。

 なぜBDではなくHD DVDを選んだのか、と水を向けると、「決して選んだわけではない。BDの搭載についても検討はしている。ただ、今の段階で量産出荷することを考えると、HD DVDを搭載するのが妥当だという結論に達した」(同社説明員)という。

 台湾アスーステックコンピューターも同様に、HD DVD搭載機を先行して展開する。同社は2006年6月中旬~下旬に発売予定の「W1J」「A7T」というAVノートパソコン2機種にHD DVD-ROMドライブを採用する。エイサーと同様にTSST製ドライブだ。

 エイサーの3製品と同様、W1JとA7TもDVB-Tの受信機能を備えるなどハイエンドの製品である。15.4インチ型液晶ディスプレイを備えたW1Jの場合、台湾では6万~7万台湾ドル(1台湾ドル=約3.5円換算で約21万~約24万5000円)で販売する予定。

 同社はBD内蔵パソコン「A6T」も提供する予定だが、「HD DVD搭載機よりは開発スケジュールが遅れており、2006年8月~9月になりそう」(アスーステック説明員)という。

 東芝はパソコン用HD DVDドライブを量産出荷するに当たり、書き込み機能を持たないHD DVD-ROMを先行投入。ハイビジョン画質の映像ソフトの販売も始まった(関連記事1)。これに対しBDドライブは、松下電器産業がBD-RやBD-REの書き込みも可能な記録型BDドライブを投入した(関連記事2)が、ハイビジョン画質で収録された映像ソフトの発売ではHD DVDに後れを取ることになった。この微妙な時間差も、現時点での勢力図に関係がありそうだ。

「ドライブの開発はBDに専念」

 ところが、パソコン用光ディスクドライブの開発となると状況が一変する。次世代光ディスクドライブの自社開発を進めている台湾メーカーとしてはアスーステックやベンキューが挙げられるが、いずれも「開発はBDに一本化していく」との姿勢だ。

 理由も似通っている。「BDの方が将来性のある規格だと判断した」(アスーステック説明員)。「双方の規格を見比べて、BDの方が消費者に良い製品を提供できると考えた」(ベンキュー説明員)。

 アスーステックは2006年12月をメドに、デスクトップパソコン用の内蔵BDドライブを発売する。価格は600米ドル前後の見込み。ベンキューはデスクトップパソコン用の内蔵BDドライブ「BW1000」を2006年8月に、USB 2.0/IEEE1394接続による外付けBDドライブ「EW100G」を同年9月に、それぞれ発売する予定。BW1000は700米ドル前後になるとの見通しを示している。

「取引先との兼ね合いで…」との声も

 ちなみにベンキューは、子会社のダクソンテクノロジー(達信科技公司)において次世代光ディスクのメディアの開発を進めている。同社では2007年1月~3月に記録型BDメディアを量産し、その後HD DVDメディアの量産を進めていく計画だ。

 HD DVDメディアの量産を先行させる他の光ディスクメーカー(関連記事3)とは逆の方針だが、この理由を尋ねると「当社の取引先企業にはソニー陣営の会社が多いため、その兼ね合いでBDメディアの開発を先に進めている。もちろん現行のDVDメディアの製造設備を転用し、HD DVDメディアも開発していく」(ダクソン説明員)という。

 同社では当面、BDは容量25GBの1層品に専念する。一方、HD DVDは1層の容量が15GBと少ないことから、容量30GBの2層品を積極的に提供していく方針としている。

日経パソコン オンライン「COMPUTEX TAIPEI 2006」については,パソコンのビジネス活用情報をお届けする日経パソコン オンラインでも報道中です。