米InterTrust Technologies Corp.は,米国カリフォルニア州のサニーベール市にある本社で,現在開発中のDRM(digital rights management)規格「Marlin」(Tech-On!関連記事その1Tech-On!関連記事その2)について,初めての公開説明会を開催した。米AOL LLCや英ARM Ltd.,米Motorola, Inc.,米Pioneer Electronics (USA) Inc.,米The Walt Disney Co.なども参加した。

 説明会でMarlin Development Community(MDC)は,Marlinの普及に向け積極的に活動していることをアピールしていた。機種名は明かさなかったが「Marlinに対応した複数の機器が2006年中に登場する」という。中でも,ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション 3」(PS3)がMarlinに対応するのではないかとの見方が広がっている。MarlinのSDK(software development kit)は,当初配布するものからPS3に対応するとしているからである。SCEの戦略にもよるが,MDCが2006年中に登場するという機器の中に,PS3が含まれる可能性は十分にある。

 Marlinに対応したコンテンツの準備状況についてMDCは,「コンテンツ業界と緊密な関係を結んで,Marlinの開発を進めている。コンテンツ保有者向けの契約書を現在策定中だ。契約書が2006年第3四半期末ころに完成する予定となっているので,その後でMarlinに対応したコンテンツの保有者が公表される」(MDC)。Marlin技術のライセンスを管理する団体とライセンス費はまだ定めていないが,2006年9月までに発表する予定という。「端末メーカーが受け入れやすい価格でライセンス費を設定するつもりだ」(InterTrust社のChief Executive Officer,Talal Shamoon氏)。

 Marlinをめぐる動きは2006年第2四半期~第3四半期に活発になりそうだ。Intertrust社や松下電器産業,オランダRoyal Philips Electronics社,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.,ソニーといったMDCの設立に携わった企業以外は,2006年6月から1年間に2万米ドルの参加費を支払えばMDCの会員になれる。会員は,端末もしくはサーバー向けのSDKを「開発費を回収できる価格」(MDC)で,SDKをInterTrust社に注文できる。MDCによると,Marlin対応機器の開発を急ぎたいとの理由から,ある企業に対して2006年7月にはMarlin SDKを出荷するという。

 当初に出荷するMarlin SDKは,Marlinの中心技術である「Core」とブロードバンドを使ったコンテンツ配信を想定した「Broadband」規格のサブセットに対応している。端末向けのSDKは,ANSI C/C++による開発に対応している。PS3やPocketPC,Windows Mobile 5.0,Symbian 9,Windows XP,86系,MIPS系,ARM系のマイクロプロセサで動作するLinux,MacOS X,Windows上にLinuxに近い環境を実現するCygwinに対応する。

 Marlin向けの認証やキー管理などを担当する団体である「Marlin Trust Management Organization(MTMO)」は,現在,既に運営可能な状態という。同団体は上記のコンテンツ保有者向けの契約書に加えて,2006年第3四半期中に端末メーカーや配信サービス提供者向けの契約書も策定する予定。Marlin技術を導入するのに不可欠の順守事項も同時期に提供する。