アルプス電気は,同社のプライベート・ショー「ALPS SHOW 2006」に,同社が英University of CambridgeのCAPE(Centre for Advanced Photonics and Electronics)と共同開発している「ホログラム・プロジェクタ」の試作品を出展した(関連記事)。長焦点レンズなどが不要で小型,ピント合わせが不要,電力効率が高いといった特徴を持つ。さらには,世界で初めて,一般のビデオ・カメラで撮影した動画をリアルタイムにホログラム像にすることもできるようになったという。
ホログラム・プロジェクタの構造は非常に単純で,ホログラムの干渉縞を映した反射型液晶パネル(LCOS:liquid crystal on silicon)にレーザ光を再生光として当て,その反射光をスクリーンに投影するだけである。試作品の外形寸法は,9.5cm×5.5cm×4.2cmと手のひらサイズ。「個別部品で構成しているレーザの駆動回路などを,IC化すれば1/4ぐらいの体積に小型化できる」(アルプス電気の英国法人ALPS Electric Technology Centre(UK)Ltd. Managing Directorの笹川新一氏)。将来は,レーザ素子もICに組み込んで,携帯電話機に載せられるほどに小型化するのが目標であるという。
現時点では単色の映像しか映せないが,近い将来に赤(R),緑(G),青(B)など3色の再生光を利用して,カラー映像も映せるようにする計画である。
ホログラフィは,従来の写真では失われていた光の方向や位相の情報を,明暗や色(波長)の情報と共に記録,再生する技術。失われる情報がないために,「ピント合わせといった概念がなくなる」(同社)ことになる。光の利用効率といった点でも「理論上は再生光をすべて利用するため,高い効率が得られる。実際には,40%~50%の電力効率を実現している。従来のプロジェクタは5%ぐらい」(笹川氏)。