図1 横浜技術研究所の新社屋
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図2 日亜化学工業 代表取締役 社長の小川英治氏
図2 日亜化学工業 代表取締役 社長の小川英治氏
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図3 クリーンルーム
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図4 各種測定に使う暗室
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図5 パッケージなどの研究室
図5 パッケージなどの研究室
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図6 新規モジュールの試作や信頼性試験に使用
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図7 一部の会議室には,白色LED照明を採用
図7 一部の会議室には,白色LED照明を採用
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 日亜化学工業は,青紫色や青色といった半導体レーザや,青色や白色といった発光ダイオード(LED)応用技術の開発拠点である,横浜技術研究所の新社屋を2006年5月23日に公開した(図1,図2)。照明機器,車載機器,ディスプレイといった用途に向けて,半導体レーザやLEDを光部品と組み合わせた光源モジュールの開発や,これら光源モジュールを駆動する回路の設計を手掛ける。徳島県阿南市にある同社本社が「光を創る拠点」,横浜技術研究所を「光を操る拠点」と位置付ける。従来,LED応用機器を設計開発する拠点を同じ場所(横浜市神奈川区)に設けていたが,規模や装置が十分ではなかったという。今回の新社屋でこれらの課題を解決し,LED応用機器の開発を加速していく構えだ。当初は半導体レーザを使った光源モジュールの開発が多く,徐々にLED搭載の光源モジュールの開発が増えていくとみる。新社屋は2006年1月31日に完成したもの。横浜技術研究所に所属する人員は現段階で25名と少ない。同社は装置や人員を徐々に増やし,開発リソースを拡充していくとする。人員は最大250名まで増やせるという。

装置搬入はこれから


 新社屋は7階建て。5~6階が実験スペースであり,3~4階は当面の間は「将来の開発規模拡大のため」(日亜化学工業)の空きスペースである。実験スペースには,延べ床面積が300m2のクリーンルームを2カ所設けている。クリーンルームは,主に半導体レーザを使った光源モジュールの開発で使う。クリーンルームの清浄度はクラス1000。今回公開した6階のクリーンルームには,まだ装置はなかった(図3)。

 5階には,暗室とパッケージなどの実験室,新規モジュールの試作や信頼性試験の実験室といった3つの研究施設がある。暗室では,照明機器用の光モジュールの明るさや色むらなどの測定や自動車用ヘッドランプの配向パターンなどの測定を実施する。現段階では設置した装置はないが,2007年1月までに各種測定装置をそろえる予定(図4)。パッケージなどの研究室では,半導体レーザをモジュールに組み込む際に位置合わせ(調芯)する装置や,ハンダ付け装置が既に設置されていた(図5)。新規モジュールの試作や信頼性試験の実験室は,製品のアイデアが浮かんだ技術者が手作りで試作品を作製したり,熱ストレスを加えて光源モジュールの信頼性試験したりといった用途で使う。今のところ,熱処理装置やプローバなどがある(図6)。

 なお,1階の会議スペースには,白色LEDを照明用光源に使った部屋を用意した(図7)。発光効率が40lm/Wで,投入電力1Wクラスの白色LEDを天井に多数埋め込んだ。外光が入らない条件では室内はやや暗く,光量が足りない印象を受けたが,「発光効率が100lm/Wになれば「暗い」といった問題は解消する」(日亜化学工業)という。なお,同社は2006年6月から発光効率100lm/Wで光束6lmの白色LEDを発売する予定。

首都圏進出で,即戦力を集める


 日亜化学工業が横浜技術研究所を拡張した理由には,半導体レーザやLEDを使う機器が次第に高度になり,首都圏での顧客との関係強化や人材確保が必須になったことがある。同社には半導体レーザやLEDといった光源の技術者は多数所属するが,これら光源を組み込んだモジュールについては技術者が足りないという。光源モジュールの分野では中途採用を中心に即戦力になる技術者を集めるとするが,首都圏の即戦力になる人材は徳島県での勤務に二の足を踏むことが多いという。このため「人材を求めて,こちら側から出てきた」(同社 代表取締役 社長の小川英治氏)。なお,同社が新卒採用する人材の9割近くが徳島県やその近隣の出身者という。