図1 記者会見の場で握手を交わすソフトバンクグループの孫正義氏(中央)と,Vodafone Group PlcのArun Sarin氏(右),Bill Morrow氏(左)
図1 記者会見の場で握手を交わすソフトバンクグループの孫正義氏(中央)と,Vodafone Group PlcのArun Sarin氏(右),Bill Morrow氏(左)
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 ソフトバンクは,英Vodafone Groupとの間で,端末やコンテンツの共同調達などを担うジョイント・ベンチャー(合弁会社)を設立することで合意した(ニュース・リリース)。出資比率はいずれも50%で,共に3900万ユーロ(約55億円)ずつ出資する。

 新会社設立の目的は三つある。一つは,携帯端末を共同で開発,もしくは調達すること。もう一つは,世界規模のスポーツ・イベントやニュース,ドラマなどのコンテンツを携帯端末向けに共同で調達すること。そして最後の一つは,端末に音楽やゲーム,映像などの大容量コンテンツを配信するための「新しいサービス・プラットフォームの共同開発」である。

 このうち,最初の二つの目的は比較的分かりやすい。ソフトバンクにとっての利点は,日本で調達した端末や,スポーツやニュースなど世界に通用し得るコンテンツを,Vodafoneグループの顧客にも提供できることだ。Vodafone Groupの顧客数は,通信速度が高い第3世代携帯電話(3G)サービスに限っても1000万件以上。NTTドコモやauに劣らない顧客基盤を期待できることから,端末やコンテンツをソフトバンクに供給しやすくなる。

 Vodafoneグループにとっての利点は,日本市場との接点を維持できること。「そもそも我々が日本に展開した理由は,日本が世界に先行する技術やサービスが登場するイノベーティブなマーケットだからだ。我々は,イノベーションのチャンスを失いたくない。そのために今回ソフトバンクと提携した」(Vodafone Group Plc, CEOのArun Sarin氏)。

 ただし上記二つの目的は,いみじくもSarin氏の発言が示すとおり,2003年に日本に進出したVodafoneグループが目指したものと類似している。Vodafoneは,世界共通仕様の端末を日本で販売するなど規模のメリットを追求した。だが,日本の顧客と世界の顧客では求める端末の仕様やサービスの差が大きく,思うように相乗効果が生めなかった経緯がある。孫氏はこの点について,今後は主基板は共通化,ユーザー・インタフェースはローカル化などと切り分けることで,規模のメリットと日本市場への対応を両立したいと表明した。

「サービス・プラットフォーム」とは?

 三番目の目的「新しいサービス・プラットフォームの共同開発」については詳細を明らかにしなかったが,発表会で孫氏は次のような断片的なコメントを残した。

 「(開発するプラットフォームは)ポータルと,そのポータルの下にあるミドルウエアを合わせたものになる」
 「任天堂やソニーは,世界中にゲーム・ソフトのプラットフォームとなるハードウエア,ソフトウエアを提供し,成功した。こうした考えを携帯電話機でも生かしたい」
「モバイルのポータル,つまりブロードバンドにおけるYahoo!やGoogleに近いポジションを取れる」

 この話から推測すると,ソフトバンクの狙いは,映像や音楽,ゲームなどのリッチ・コンテンツを提供するための共通仕様の策定が候補になりそうだ。NTTドコモの「iモード」が文字を主体とするコンテンツ配信プラットフォームとすれば,ソフトバンクは動画などのリッチ・コンテンツを主体としたプラットフォームの開発を目指すというわけである。実際に合弁会社が開発するのは,ブラウザあるいはGUI実行環境のほか,著作権保護,ストリーム配信されたコンテンツの受信といった機能を実現するミドルウエアになるとみられる。