HDDレス・パソコンの試作機を持つソニーの石田佳久氏
HDDレス・パソコンの試作機を持つソニーの石田佳久氏
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 ソニーは,記録媒体としてHDDの代わりにフラッシュ・メモリを搭載した小型パソコンを製品化する。現時点では価格や出荷時期などの詳細を明らかにしていない。2006年6月下旬に詳細を発表する。2006年5月16日に東京都内で開催した,パソコン「VAIO」の新製品発表会の席上で明らかにした。

三つの利点を挙げる


 ソニーが最初に製品化するフラッシュ・メモリ搭載パソコンは,同社の小型パソコン「VAIO Type U」の新モデル「VGN-UX50」が基になるという。同小型パソコンが搭載する30GバイトのHDDを取り除き,16GバイトのNANDフラッシュ・メモリを格納する。発表会ではフラッシュ・メモリを採用する利点を,大きく三つ挙げた。(1)アプリケーション・ソフトウエアの起動時間の短縮,(2)HDDのスピンドル・モータが無くなることによる故障の抑制,(3)低消費電力化による利用時間の延長,である。

 フラッシュ・メモリ搭載モデルを,ノート・パソコンなど小型パソコン以外の機種へ拡充するかどうかについては,現時点で具体的な計画はないとした。「フラッシュ・メモリはHDDに比べるとまだ高く,コストと容量のバランスを取る必要がある。現時点ではモバイル用途の小型パソコンが最適な応用先だろう」(ソニー VAIO事業部門 部門長の石田佳久氏)という。

 ノート・パソコンなどに搭載するHDDをフラッシュ・メモリに置き換える試みは,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.や,OSベンダーである米Microsoft Corp.なども取り組んでいる。例えばSamsung社は2006年4月,32GバイトのNANDフラッシュ・メモリを搭載した,SSD(solid state disc)と呼ぶHDD型記録媒体を発表している(発表資料)。1.8型HDDの代替を想定したもので,HDDに比べて読み出し速度は約3倍,書き込み速度は約1.5倍に高まる。動作時の消費電力は約5%で済むという。2005年5月には16Gバイト品も製品化している(Tech-On!の関連記事)。

 一方のMicrosoft社はこれまでSamsung社と共同で,フラッシュ・メモリを内蔵するHDD「Hybrid Hard Disc」の開発を進めてきた。次期OS「Windows Vista」ではこのHybrid Hard Discに対応した管理ソフトウエアを標準添付するとみられている。