オリンパスメディカルシステムズは,がんなどの微細病変部の早期発見に向けた電子内視鏡システム「EVIS LUCERA SPECTRUM」を2006年6月10日に発売する(図1~2,ニュース・リリース)。特徴は,毛細血管を浮かび上がらせる狭帯域観察(NBI,図3)と,腫瘍性病変部の色調を強調する蛍光観察(AFI,図4),粘膜深部の血管や血流を表示する赤外光観察(IRI,図5)の3機能を備えていること。こうした電子内視鏡システムの実用化は世界初という。価格は462万円で,年間1200台の売り上げを見込む。
NBIには,白色のXeランプから光学フィルタを介して取り出した波長415nmと540nmの光を用いる。両波長は,ほかの波長に比べてヘモグロビンの光の吸収率が高いので,毛細血管を黒く浮かび上がらせることができる(図6)。毛細血管を観察するのは,がんなどの病変部は多くの場合,その配置や密度が通常と異なるためだ。415nmの光は粘膜の表層部分を,540nmの光はやや深い部分を観察するために使う。AFIには,540~560nmの光を,IRIには805nmと940nmの光をそれぞれ照明に用いる。撮影映像はHDTVに準拠している。
「NBIは世界で普及する」
記者会見では,製品開発に協力した国立がんセンター東病院 医師の佐野寧氏が登壇し,特にNBI機能への期待を述べた。「NBIを使えば,これまで見過ごしかねなかった早期がんを簡便に発見できる。従来は,色素を散布しなければ毛細血管の様子を観察できず,手間も時間もかかっていたが,NBIはスイッチ一つで,毛細血管を浮かび上がらせる。きっとNBIは世界で普及する診断方法になるだろう」(佐野氏)。同氏の調べによると,通常の電子内視鏡が79.1%だった正診率をNBIにより,色素内視鏡と同じ93.4%に高められた。
このほかオリンパスメディカルシステムズは記者会見で,内視鏡の市場環境にも言及した。国立がんセンター中央病院 医師の齋藤大三氏の調べによると,早期がんに対する治療件数のうち,内視鏡的がん切除は2001年以降,外科的がん切除を上回っている(図7)。こうした流れをさらに後押しするのが診療報酬の改訂である。2006年度からは早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術について,1万1000点と高い診療報酬点数を,厚生労働省が認めた(図8)。電子内視鏡システムはHDTV化が進んでおり,直近の同社の販売実績ではHDTV対応機が全体の53%を占めたという。