日本IBMは開催中のグリッド・コンピューティング関連の展示会「Grid World 2006」(2006年5月11~12日,東京国際フォーラム)に,米IBM Corp.やソニー・グループ,東芝で共同開発したマイクロプロセサ「Cell Broadband Engine(BE)」を展示した。米Apple Computer Inc.のパソコン向けマイクロプロセサ「Apple PowerMac G5」との動作性能比較のデモンストレーションや,ブレード・サーバー用のボードに実装した例などを展示している。
G5との比較では,浮動小数点計算を含む3次元動画像のレンダリング速度を比べるデモを公開。デュアルコア型で2GHz動作のG5に比べて約35倍も処理が速いことを示した。また,Cell BEを日本IBMが2006年第3四半期に出荷予定のブレード・サーバーのブレードに実装したものも参考出展した。ただし,このブレード・サーバーを一般ユーザー向けの標準品として発売するかどうかは検討中だという。「Cellの能力を最大限に引き出すには,プログラミングにも工夫が必要。現時点では,特定のユーザー向けに発売することを想定している」(日本IBM)という。例えば,ブロードバンド・コンテンツの配信サーバー機ベンダー,高精細な画像を扱う医療機器メーカー,大規模な科学技術計算をしたい気象関係者や学術関係者,などである。
チップ間のグリッド実現は「ニーズ次第」
日本IBMが同展示会にCellを出展した理由は「1個のCPUコアが残りの8個の信号処理プロセサ・コア『SPE』に演算処理を割り振って並列処理をさせる技術が,グリッド・コンピューティングと類似しているため」(同社)という。
2002年にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)がまとめたCellの特許出願書には,Cell同士がネットワーク越しに通信しあい,互いの演算資源を利用し合う形態が記載されている。これについては「設計思想としてはそうした使い方も想定しているが,今回のチップ製品に実装はしていない。実現はニーズ次第」(日本IBM社)という。