東芝の西田氏
東芝の西田氏
[画像のクリックで拡大表示]

 東芝は,2006年5月11日に東京都内で経営方針説明会を開催した(Tech-On!関連記事)。同社 取締役 代表執行役社長の西田厚聰氏が壇上に上り,今後の事業目標や事業戦略を説明した。具体的には2010年度時点での売上高として9兆円,営業利益として5400億円を目指すという。このために,2006年度~2008年度の3年間の中期経営計画を示した。2008年度の売上高は7兆8000億円,売上高営業利益率は5%以上と,「国内電機メーカーとしてトップクラスの利益水準を実現したい」(西田氏)とした。この計画では売上高は2005年度から年率7%ずつ増やす計画となる。

 この成長を牽引するのは,NANDフラッシュ・メモリを中核とした電子デバイス事業である。西田氏が今回明らかにした2008年度の部門別の事業目標では,電子デバイス事業の売上高,売上高営業利益率がそれぞれ2兆2900億円,10%としている。2008年度のデジタル・プロダクツ事業の売上高は3兆1000億円と電子デバイス事業を上回るものの,売上高営業利益率は2%にとどまる見込みだ。「デジタル・プロダクツ事業ではHDDで収益を確保し,映像事業の収益を改善したい」(東芝の西田氏)としている。残る社会インフラ事業の売上高は2兆1600億円,売上高営業利益率は4%を目指す。社会インフラ事業では,「原子力事業や医用機器事業で安定収益を得たい」(同氏)とする。家電事業の売上高は7500億円,売上高営業利益率は1%となる。全体を通して,電子デバイス事業偏重の姿勢が鮮明となっている。

今後の設備投資や研究開発投資も,電子デバイス偏重となる。全社の設備投資額については,2006年度~2008年度の3年間で2兆400億円と,2003年度~2005年度の3年間の1兆1323億円に比べてほぼ倍増する。2兆400億円の内,61%を電子デバイス事業に投じる。全社の設備投資額の約半分をNANDフラッシュ・メモリなどの半導体事業に向けることになる。NANDフラッシュ・メモリ向けについては,先日発表した四日市の300mmウエハー工場「FAB4」に加えて,四日市以外の場所での300mmウエハー新工場「FAB5」を建設する方向で検討を進めていることを明らかにした。

 全社の研究開発投資については,2006年度~2008年度の3年間で約1兆2600億円を投じる。2003年度~2005年度の3年間の約1兆571億円に比べて約20%増加する。2006年度~2008年度に投じる1兆2600億円の約47%を,やはり電子デバイス事業に向ける。具体的には,次世代不揮発性メモリ,ブロードバンド機器向けマイクロプロセサ「Cell」の応用システム,小型メタノール燃料電池SEDなどの研究開発を強化する。電子デバイス事業向け以外では,全社の研究開発投資の内,29%をデジタル・プロダクツ事業向け,19%を社会インフラ事業に向ける。