図1 ソニー 執行役 EVP 兼CFOの大根田伸行氏
図1 ソニー 執行役 EVP 兼CFOの大根田伸行氏
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 「2006年1月に上方修正した業績見通しを上回ることができたが,本格的な回復までには道半ばだ──」(ソニー 執行役 EVP 兼CFOの大根田伸行氏,図1)。ソニーは2005年度(2005年4月~2006年3月)の連結業績を発表した(業績発表文の掲載ページ)。売上高が対前年度比4.4%増の7兆4754億円,営業利益が同67.9%増の1913億円と増収増益だったが,本業のエレクトロニクス分野の営業赤字はわずかな改善にとどまった。

エレクトロニクス分野は34億円の改善にとどまる

 エレクトロニクス分野は,売上高が対前年度比1.7%増の5兆1505億円となった(図2)。液晶テレビやリアプロ・テレビなどの売り上げ拡大が寄与したとする。ただし,現地通貨ベースでの売上高は同3%減であり,円安の進行に助けられた面がある。エレクトロニクス分野の営業損益は309億円の赤字。343億円の営業損失を計上した2004年度から34億円の改善にとどまった。製品分野別に営業損益をみると,ビデオが793億円の黒字を達成した(図3)。営業赤字だったのはテレビと半導体。テレビは898億円,半導体は532億円の赤字だった。

 ソニーは2007年度末までにエレクトロニクス分野の営業利益率を4%にする目標を掲げているが,構造改革費用と代行返上益を除いた2005年度の営業利益率は0.6%だった。「2006年度のエレクトロニクス分野は,構造改革費用を除かなくても2%以上の営業利益率を達成する」(大根田氏)とし,2007年度末の目標達成に向けて順調との見方を示した。

薄型テレビは2006年度下期に黒字化

 販売が好調な薄型テレビについては,2006年度下期に黒字転換する見通しを示した。「2005年度にはブレーク・イーブンに近い四半期もあった」(大根田氏)。2005年度の薄型テレビの出荷台数は280万台だったが,2006年度には600万台の出荷を見込む。液晶テレビについては,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.との液晶パネル製造合弁会社である韓国S-LCD Corp.が第7世代液晶パネル生産ラインの生産能力を拡大する予定であり,「半分程度はS-LCDから調達できるだろう」(大根田氏)とした。

 ゲーム分野は増収減益だった。1406万台を出荷した「プレイステーションポータブル(PSP)」が増収に寄与し,売上高は対前年度比27%増の9586億円だった(図4)。営業利益は62%減の87億円。実質的には600億円以上の黒字だったが,2005年度末に「プレイステーション3(PS3)」関連費用を500億円以上計上した。具体的には,PS3のハードウエアに関する引当金,PS3関連の研究開発費,PS3用ゲーム・ソフトウエアの開発ツールの更新費用などである。2006年11月の発売を予定するPS3を,2007年3月までに600万台を出荷する見通しを示した。

株式市況に支えられる

 映画分野は,売上高が対前年度比1.7%増の7459億円,営業利益が同61%減の274億円だった。「スパイダーマン2」が大きく貢献した前年度に比べ,劇場公開作品が不振だったことが響いた。

 ソニーの増益を支えたのが金融分野である。売上高が対前年度比32.6%増,営業利益は同239.4%増の1883億円だった。株式市況の好転などによる運用損益の改善が寄与した。音楽関連事業などを含むその他の分野は,売上高が対前年度比11.1%減の4089億円,営業利益が同286.4%増の162億円だった。

 2006年度の業績見通しは,売上高が対2005年度比10%増の8兆2000億円,営業利益が同48%減の1000億円である。設備投資額は,同20%増の4600億円を予定する。そのうち1700億円が半導体向けであり,2005年度より300億円増やす。

 2006年度の半導体向け設備投資について大根田氏は,「増加分のほとんどはCMOSセンサを製造する熊本工場への投資」と説明した。CMOSセンサはCCDよりも利益率は低いが,歩留まりの改善などで対処していくとした。

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図2 エレクトロニクス分野の業績
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図3 エレクトロニクス分野の製品分野別業績
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図4 ゲーム分野の業績
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