Bluetooth SIGのプレゼンテーション資料
Bluetooth SIGのプレゼンテーション資料
[画像のクリックで拡大表示]

 Bluetoothの標準化団体であるThe Bluetooth SIGは,次世代高速版Bluetoothの伝送技術として,業界団体The WiMedia Allianceが推進するマルチバンドOFDMを採用することを明らかにした( ニュースリリース)。

 超広帯域を利用するUWB技術であるマルチバンドOFDMを使うことで,数mの範囲内では480Mビット/秒といった高速データ伝送が可能となる。Bluetooth SIGとWiMediaは,今後共同で高速版オプション仕様の策定を進めることでも合意した。2007年第1四半期までに仕様を策定し,その仕様に準拠した試作チップが2007年第2四半期~第3四半期に登場すると見込んでいる。「対応製品が登場するのは2008年から」(The Bluetooth SIG)を想定する。

 Bluetooth SIGは昨年,将来の高速オプション技術としてUWBを物理層に使うことを表明していたが,その伝送方式の候補としてはマルチバンドOFDMのほかにDS-UWBも挙げていた( Tech-On!の関連記事)。今回の決定を契機に,今後はWiMediaの規定するマルチバンドOFDMの物理層をベースに,高速版オプション技術を策定していくことになる。
 
 マルチバンドOFDMを採用したことについてBluetooth SIGは,「低消費電力で低コスト,そしてアドホックな接続性があるといったBluetoothの強みを継承できる。さらにWireless USBにも利用される物理層を採用することで,例えば1台の端末でWireless USBと共通のRFシステムを用い,上位のミドルウエアを切り替えて使うという実現形態が採れる」と,汎用性の高いシステムであることを優位性とした。

互換性を維持


 Bluetooth SIGは今回の選定において,現行Bluetoothとの互換性を維持するシステムを実現することを重要視した。このため実際の実現形態としては,現行Bluetoothが利用する周波数ホッピング方式のスペクトラム拡散技術利用の物理層と,マルチバンドOFDMを利用する物理層の両方を兼ね備えたRF回路を構成することになる。「既存の多数のBluetoothデバイスとの互換性は確保する。用途によって,どちらかの物理層を使い分ける」(The Bluetooth SIG)と狙いを説明した。さらに今回のWiMediaの物理層の利用にとどまらず,将来的には無線LANなど他種の物理層を使っていく可能性があることも示した。

 高速版オプション技術の利用シーンとしては,家庭のパソコンと携帯型メディア・プレーヤを無線で接続して楽曲ファイルや動画コンテンツを瞬時にダウンロードする用途や,自動車内のオーディオ・システムと携帯型音楽プレーヤを無線で接続するなどの用途を想定する。「部屋内で,100Mビット/秒程度のデータ伝送速度を使う用途が最も多い利用形態と考えている」(The Bluetooth SIG)。

 Bluetooth SIGとWiMediaは,各国の周波数規制の緩和に向けた取り組みでも協調していくことで合意した。「現行Bluetoothの標準化を立ち上げた当初も,2.4GHz帯の周波数帯は必ずしもフリーではなかった。各国の周波数規制の緩和に取り組むため,数年の努力が必要だった。UWBの利用に関しても同様の努力が必要になるだろう」(The Bluetooth SIG)と見る。特に6GHz以上の高周波帯に関する取り組みが必要としている。

 今回の決定に先立って,既に英CSR社は,WiMediaの物理層仕様を組み込んだBluetooth用チップの開発を進めていることを明らかにしている( Tech-On!の関連記事)。また米Open Interface North America社は,2006年1月に開催された「2006 International CES」において,Bluetoothの上位アプリケーション・ソフトウエアをWiMediaを使って実行する伝送デモを公開していた( Tech-On!の関連記事)。なおBluetooth SIGは,2006年3月27日から30日まで米ワシントン州シアトルで開発者向けイベント「All Hands Meeting 2006」を開催中であり,ここでも関連するデモを実演するという。