図1 開発したLSIの送信データのスペクトル。占有周波数幅が狭く,アマチュア無線や短波放送への悪影響は小さいという
図1 開発したLSIの送信データのスペクトル。占有周波数幅が狭く,アマチュア無線や短波放送への悪影響は小さいという
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 三菱電機とルネサステクノロジは,高速電力線データ通信(PLC:powerline communication)に向けた通信モデム用LSIを開発した。現在開催中の電子情報通信学会 2006年総合大会で発表した【講演番号:A-5-24】。

 PLC用LSIは,アナログ回路を含む物理層およびデータリンク層の回路を1チップ上に集積した。8ビットのA-D/D-A変換器,低域通過フィルタ(LPF),自動利得制御回路(AGC)などを含み,動作に必要な外付け受動部品は,水晶発振子,絶縁用のトランスやライン・ドライバ,帯域通過フィルタだけであるという。

 ただし,伝送速度は物理層で最大400kビット/秒と高くない。「今回は,白物家電の制御向けのネットワーク仕様『ECHONET』の短波帯(2MHz~30MHz)版という位置付け。そのため,動画像の送受信は想定していない」(同社)からだという。ECHONETは,10k~450kHzという低周波のキャリヤ周波数を用いるPLC方式をいくつか規定している。

 変調方式には,ECHONETの「拡散変調B」と呼ぶ方式を採用した。「OFDMのサブセット」(同社)といえる方式で,中心周波数が2.56MHz,5.12MHz,6.4MHz,7.68MHz,8.96MHzの5本のキャリヤ周波数を選び,それぞれをDQPSKなどで変調した後,合波して送信する。これはOFDMの逆FFT処理と等価である。受信側はFFTで復調する。各キャリヤは,デジタル・フィルタを通してスプリアス発射(帯域外への漏洩出力)を抑制したという(図1)。

 LSIには,CRC(cyclic redundancy check)やリード・ソロモン符号といったエラー制御機能も集積した。「誤り訂正機能は,S/Nが+19dBの場合にビット誤り率が10-5。DQPSK利用時の理論値と3dB以内に収めるという目標を達成した」(同社)という。

 LSIの製造プロセスには,0.18μmルールのCMOS技術を用いた。論理回路部の回路規模は298kゲート。LSIのチップ・サイズは明らかにしなかった。