総務省は,マイクロ波帯(3.4GHz~10.25GHz)におけるUWB(ultra wideband)無線システムの共用条件について最終報告書(PDFファイル)をまとめた。2006年3月27日に情報通信審議会の情報通信技術分科会に報告する。これで同条件についての議論は事実上終了し,2006年7月~8月に日本で厳しい条件付きながらUWBが利用可能になる見通しとなった。

 今回の最終報告書で示された共用条件は,2006年2月の最終報告書案で示されたものとほぼ同じである(Tech-On!の関連記事)。変更されたのは,UWB無線システムの搭載を禁止した玩具の定義に,ゲーム機が含まれると明記された点ぐらいである。

積み残した課題が多い

 今回の共用条件は,UWBのベンダーにとって,課題が多いものとなった。例えば,利用できる周波数帯が非常に限定的である点だ。

 総務省が募集した同条件についてのパブリック・コメントの中には,4.2GHz~4.8GHzだけでなく3.4GHz~4.2GHzも,2008年末までは干渉回避技術(DAA)なしで米国並みの規制値で利用可能にすることを希望する意見もあった。しかし総務省は「4.2GHz~4.8GHzに時限措置があるのは第4世代移動体通信システムの開始に時間がかかるため。3.4GHz~4.2GHzは,現行の固定マイクロ通信などの用途を保護するため」などとして,条件の緩和を見送った。

 共用条件緩和の鍵を握るDAAも「今まさに各ベンダーがそれぞれの技術をアピールし始めたところ」(UWB無線システム委員会の関係者)という段階。総務省は,今後,それらを実装した無線機器で実地に動作をテストするなどして技術を絞り込んでいく姿勢である。

 あるUWB無線システムの技術者は「(米WiMedia Allianceが採用するマルチバンドOFDM方式で規定する)出力が-70dBm/MHz以下に抑えられたままであるため,3GHz~4GHzのチャネルは事実上使えない」という。ベンダーは,日本向け製品に4.2GHz~4.8GHzのチャネルをホッピングさせずに利用するモードを設定するか,7GHz~10GHzに対応した製品を開発する必要に迫られる。

 最終報告書は,今回の共用条件をあくまで暫定措置であるとしている。東京工業大学大学院 教授でUWB無線システム委員会 主査の安藤 真氏は,2006年3月20日に開催された,パブリック・コメントについての報告会で「3年で共用条件を見直す。電波天文に電波干渉が頻発するなど何か問題が出てくれば3年と言わず,日程を前倒しても見直す」と強調した。同委員の別の関係者は今回の条件を「とにかくUWBを使わせて欲しい。そんな思いからの見切り発車」とした。