中央が炭素材料で作った釜。本体の色は漆黒と白銀と名づけた。
中央が炭素材料で作った釜。本体の色は漆黒と白銀と名づけた。
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 三菱電機は,希望小売価格が11万5500円と高額なIHタイプの炊飯器「NJ-WS10」を2006年3月21日に発売した。釜に炭素材料を使ったのが特徴で,「お米をおいしく炊き上げる」(三菱電機)という。冷蔵庫で立ち上げた高級シリーズ「Wclass」の名称を,本製品でも使っている。

 大手量販店はNJ-WS10を10万円程度で販売し始めた。これまで最も高い家庭用の炊飯器は「松下電器産業の7万円程度の製品だった」(大手量販店)という。炊飯器の国内市場は約630万台で安定しているが,IHタイプの構成比は2004年度に過半数を超え,今後も上昇が見込まれている。

釜は職人の手作り

 NJ-WS10の釜は,焼成して得た純度99.9%の炭素材料に,中国で職人が手作業で荒削りと本削りを施した後,フッ素コーティングをして完成する。手作りのために,月産1000台が限界という。

 IHタイプの炊飯器は,コイルを流れる高周波電流が作る磁界によって釜に誘導電流を流して加熱する。炭素材料で作った釜は磁力線が中まで入り込むため,釜全体が発熱する。これに対して,従来のステンレス鋼やAl合金,Cuなど金属製の釜では,誘導電流が釜の外側の表面に集中するために釜全体が発熱しなかった。

 釜全体が発熱する効果と熱伝導率が高い炭素材料の効果で,従来品よりも温度上昇を早めながら温度を均一に保つことができる。これによって,でんぷんの分解が促進され,甘みのあるごはんができるという。

左から,焼成後の炭素材料,荒削り後,本削り後,コーティング後
左から,焼成後の炭素材料,荒削り後,本削り後,コーティング後
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