総務省の情報通信審議会は,情報通信技術分科会 広帯域移動無線アクセスシステム委員会の第1回会合を開催した(関連記事)。いわゆる「モバイル・ブロードバンド」の無線技術の選択や他の無線システムとの共用条件を議論するための会合である。2.5GHz帯(2.535GHz~2.605GHz)の70MHz分を利用することを想定する。

 候補になっている無線技術は,(1)IEEE802.16やIEEE802.16eに基づく固定WiMAXまたはモバイルWiMAX,(2)米QUALCOMM,Inc.と京セラが共同提案したIEEE802.20の草案,(3)ウィルコムなどが策定中の次世代PHS技術,の3方式である。

仮想移動体サービス事業者の設定も想定へ

 現時点では,(1)のモバイルWiMAXを検討する通信事業者が多い。「周波数が割り当てられればサービスに利用する」ことを表明したKDDI,技術を検討する専門チームを立ち上げたイー・アクセスやソフトバンク系のBBモバイル,実証実験を予定しているNTTドコモやアッカ・ネットワークスなどである。今後,手を挙げる事業者はさらに増えそうだ。これまで通信事業者でなかった事業者が登場する可能性もある。

 一方で,70MHz分から利用できるのは,1チャネルが10MHz幅だと6~7チャネル,20MHz幅だと3チャネルだけしかない。このままでは,少ないチャネルを多くの事業者で奪い合うことになる。このため,同委員会は今回,(1)複数の事業者が同一チャネルを地域を分けて利用する,(2)同一の無線インフラを,複数の事業者が共用する,などのケースも検討する。(2)は,「仮想移動体サービス事業者(MVNO:mobile virtual network operator)」と呼ばれ,PHSや携帯電話でも運用例がある。日産自動車などはモバイル・ブロードバンドにおいて「MVNOとなって,自動車向けブロードバンド・サービスを提供する可能性がある」ことを明らかにしている。

実質6カ月で結論

 第1回目は,今後の審議の進め方について議論した。具体的には,技術方式は電波産業会(ARIB)専務理事 若尾正義氏を主査とする「技術的条件作業班」で検討する。2006年9月中にも最終報告書案をまとめ,2006年11月に答申を出す予定である。同委員会 主査で,東京工業大学大学院理工学研究科教授の安藤 真氏は,「社会的にも関心,ニーズの高い技術であり,緊張感を持って,できるだけ早い審議をしていきたい」と発言した。