半導体市場は,2000年を境にその潮流が大きく変わった。それまでの先進国の需要に依存した状況から発展途上国の需要がけん引する状況に変化した。その結果,2005年のIC出荷量の38%を開発途上国向けが占め,2010年には47%を占めるまでになる見込みだ(図)。人口の多い開発途上国がけん引することで,IC出荷量の成長の傾きも2000年以降はより急峻になった。BRICsへの急速な電子機器の普及がそれを示している。


図●先進国と開発途上国のIC出荷量の推移(1986年~2005年実績,2010年予測)
WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)のデータを元に,日経マーケット・アクセスが先進国向けと開発途上国向けに分けた。2010年は日経マーケット・アクセスの予測値。

<IC出荷量の予測手順>
(1)WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)の1986年から2005年までのIC出荷量を基にした。
(2)1995年までは先進国の需要が大半と仮定して,先進国の人口から1人当たりIC出荷量を求めた。
(3)1995年までの1人当たりIC出荷量から推定して,2000年と2005年の先進国向けIC出荷量を求めた。
(4)WSTSの世界全体のIC出荷量から先進国向けIC出荷量を除いて,2000年と2005年の開発途上国向けIC出荷量を求め,1人当たりIC出荷量を算出した。
(5)2010年の人口予測と1人当たりIC出荷量予測から先進国と開発途上国のIC出荷量を求めた。

膨大な人口の開発途上国に電子機器が普及開始

 1990年代は,パソコン,ゲーム機,携帯電話機など次々に新しい電子機器が先進国に普及することで,世界全体のIC需要を押し上げた。先進国の人口は約11億人でほとんど変わらずに推移したが,1人当たりのIC出荷数が急速に増えた。

 2000年以降,先進国のIC需要の伸びは一転して鈍化した。1995年から2000年は年率6%増だったが,2000年から2005年は同3%増になった。家電がアナログからデジタルへ移り変わったことで搭載IC数は増えているものの,1990年代ほどには身の周りに新しい電子機器が増えていないからだ。しかし世界全体で見ると,2000年以降の方がIC出荷量は急速に拡大している。それは開発途上国の需要が爆発的に増えているからだ。開発途上国の人口は増え続けており,2005年に先進国の人口の約4.3倍に達した。この圧倒的な数の人々がパソコンや携帯電話機といった電子機器を購入し始めたので,そのインパクトは莫大だ。エンド・ユーザー1人当たりのIC出荷量は,先進国に比べて少ないものの,2000年の5個から2005年には8個に増えている。

 開発途上国の人口の増加と電子機器の普及は今後も続くのは確実だ。したがって,IC需要の開発途上国比率が急速に上昇することは間違いない。欧米市場ばかりを意識した開発では,2010年に市場の半分しか相手にしていないことになる。