無線技術に関するロードマップ
無線技術に関するロードマップ
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 米QUALCOMM Inc.は,2006年3月2日,日本の報道陣を集めた同社イベントの中で,無線技術に対するロードマップを明らかにした。

 その中で同社が注力する次世代移動体通信規格「IEEE802.20」について言及し,2008年にも同社のCDMA2000方式の携帯電話機向けチップセットに,IEEE802.20の送受信機能を盛り込む方針であることを明らかにした。「IEEE802.20は当初から携帯電話機への搭載を目指して検討を進めた規格。電波干渉への強さや高速移動時での受信などの点で,モバイルWiMAXとは比較にならないほどの優位性がある」(米QUALCOMM Inc.),「モバイルWiMAXとは徹底的に戦う用意がある」(別の米QUALCOMM Inc.の関係者)とするなど,競合規格となるモバイルWiMAXを強く意識しながら,IEEE802.20対応チップセットの開発を急ピッチで進めていることを明らかにした。

 IEEE802.20は別名MBWA(Mobile Broadband Wireless Access)とも呼ばれるもので,時速100kmを超える高速移動体にも高速の無線インターネット・サービスを提供するコンセプトで規格策定が進んでいた。例えば20MHzの帯域幅を利用した場合には最大データ伝送速度が260Mビット/秒を超えるという。現在伝送方式のドラフト案が一本化された段階であり,規格策定終了までにはしばらく時間がかかるとみられている(Tech-On!の関連記事)。

 しかしQUALCOMM社は早くも自社のチップセットの開発ロードマップにIEEE802.20の予定も盛り込むなど,積極的に取り組み姿勢を明確にした格好だ。一方でモバイルWiMAXはその伝送規格である「IEEE802.16e」の仕様が2005年末に確定しており,既にチップセットの開発が多数の半導体メーカーの間で進んでいる。先行するモバイルWiMAXを,QUALCOMM社が追う格好になりそうだ。

 同社のロードマップでは,まず携帯電話に向けた取り組みとして2006年からHSDPAやCDMA2000 1X EV-DO RevAに対応するチップセットを出荷し,2007年にはHSUPAやEV-DO RevBに対応していく。ブロードバンド・ワイヤレスに向けては,同社が「Pre-802.20」と呼ぶFlashOFDMなどのソリューションをまずは提供する。IEEE802.20対応は2007年末ころから進める方針。ただし,伝送実験などは2006年中にも始める構えである。そして早ければ2008年末にも,第3世代方式の携帯電話機向けチップセットにIEEE802.20の機能を統合していくという。

 IEEE802.20で議論中の伝送方式の中には,QUALCOMM社の提案方式に加えて京セラが提案した「625k-MCモード」もある。QUALCOMM社は「当初開発する802.20向けチップセットは,625k-MCモードは含まれないだろう」という見通しを示した。

 同時にIEEE802.20に関しては3GPP2への技術提案を進めているという。このほかCDMA2000 1XEV-DOの将来規格(一部でRevCと呼ばれている)の中で,CDMAを使う下位互換性のある方式のほかに,下位互換性の無い伝送仕様を策定する可能性があることを明らかにした。そこでIEEE802.20のようなOFDM利用技術が用いられる可能性もあるという。