DDR2型DRAMの価格が2006年1月から上昇中だ。DDR2型512Mビット品は2006年2月末に5.7米ドルに上昇した。これまでDDR2型比率が高かったパソコン首位の米Dell Inc.に続いて,同2位の米Hewlett-Packard Co.がDDR2型の購入量を急速に増やしたために,品不足になっている。購入量が多い大手メーカーほど調達に苦労しているようだ。2005年は必ず市場価格より安く購入していた大手が,現在は最高値で購入している異例な状況だ。しかし,この状況は長くは続かない。2006年4月には供給不足が緩和され,悪くすれば価格暴落につながる。

 この引き金になるのが,2006年1月に始まったNAND型フラッシュ・メモリの急激な価格下落だ(本連載の第1回目「NAND価格下落,NANDメーカーが密かに恐れるiPod nanoの1Gバイト・モデル」参照)。

DRAMに切り替えるサムスン電子とNAND維持のHynix

 NAND型フラッシュ・メモリとDRAMの値動きは密接に関係する。DRAMとフラッシュの両方で,世界シェアの高いのは韓国Samsung Electronics Co., Ltd.と韓国Hynix Semiconductor, Inc.だ。両社は同じ生産ラインで両メモリを作り分けている。2006年第1四半期のDRAM,NAND型フラッシュ・メモリの値動きも,韓国メーカーが2005年第4四半期に値下がりしたDRAMの比率を下げてNAND型フラッシュ・メモリ比率を上げたことが原因と言ってもよい。そして,この2社に加えて米Micron Technology, Inc.も,2006年から両メモリを天秤にかけて生産する戦略を取ってくる。

 その中で,2006年第1四半期の各メーカーの動きに差が出始めた。Micron Technology社はNAND型フラッシュ・メモリ比率を計画通り上げる。Hynix Semiconductor社は,NAND型フラッシュ・メモリ比率の上昇を抑えるようだが,基本的にはNAND型フラッシュ・メモリ路線を崩さない。価格が下がれば需要が増えると読んでいるからだ。一方,Samsung社はNAND型フラッシュ・メモリからDDR2型DRAMへ一部,生産ラインを戻すようだ。DRAMの90nmプロセスの微細加工で先行しているSamsung社は,2006年3月時点の価格であれば,DRAMを生産した方が儲かるようだ。Samsung社の天秤だけがDRAMに傾いた。

 トップのSamsung社に加えて,台湾Nanya Technology Corp.とエルピーダメモリがDDR2型を増産する。この結果,2006年4月からはDDR2型の供給不足は解消されそうだが,問題はその次。本連載の第1回目で述べたように携帯型音楽プレーヤのフラッシュ需要がこれまでのように楽観できなくなった。フラッシュ需要が伸びず価格下落が続けば,Hynix社やMicron社がDRAM重視に態度を変えてもおかしくない。そうなればDRAMの価格が暴落する。


図●512MビットDDR2型DRAMと2GビットNAND型フラッシュ・メモリの価格推移(2004年第1四半期~2005年第4四半期実績,2006年第1四半期予測)