総務省は,「2.5GHz帯を使用する広帯域移動無線アクセスシステムの技術的条件」についての検討を情報通信審議会に諮問した。想定する無線システムは,少なくとも都市部では第3世代携帯電話(3G)と同様に広域をカバーする一方で,HSDPAなど3.5Gの移動体通信システムを超える高速伝送が可能,さらに自動車の走行速度程度なら通信が途切れない移動性を持つ無線システムである。同省は2006年11月の答申を見込んでいるという。

 2.5GHz帯を使う無線アクセス・システムには,携帯電話事業者だけでなく,トヨタ自動車や日産自動車などの自動車メーカー,デジタル家電のメーカーなども熱い視線を注いでいる。理由はこの無線システムが,これまでになく高速でかつ利用料金が安い無線インフラとして使える可能性があるためである。既に,技術開発に着手し,デモンストレーションを披露する事業者も出てきている(Tech-On!の関連記事)。

 現時点で総務省は無線システムが満たすべき条件として,(1)3Gや3.5Gを上回る,20M~30Mビット/秒の伝送速度,(2)上り通信(端末から基地局方向)でも10Mビット/秒,(3)3Gと3.5Gを上回る周波数利用効率,(4)上り通信と下り通信を同一周波数帯で行うTDD(time division duplex)方式,の4点を挙げた。いくつかある無線システムの候補の中で,現状でこれらをほぼ満たすのは,WiMAX系とIEEE802.20の「TDD-Wideband」と呼ぶQUALCOMM社の仕様,そして次世代PHSシステムの3仕様に絞られる。特に,WiMAX系が最有力だ。「今回の諮問に先駆けて,候補となる無線システムを議論したワイヤレスブロードバンド推進研究会でアンケートをとったところ,WiMAX系が最も支持が多かった」(総務省)ためである。

 情通審での具体的な検討事項は,(1)技術方式,(2)2.5GHz帯に隣接する無線システムとのガードバンド幅などの共存条件,(3)2.5GHz帯での無線システム間での共存条件,などになるという。