薄型テレビの販売が好調だ。その主役は,液晶テレビとPDPテレビ。「日経マーケット・アクセス」の調査によると,世界全体の液晶テレビの2005年の生産台数は対前年比2.7倍の2000万台に達した。2006年は同1.8倍の3500万台に達する見込みだ。トップ・メーカーは,“亀山”イコール高品質,高性能というブランド戦略を前面に押し出すシャープである。2005年の台数シェアは約20%だった。

 一方,PDPテレビの生産台数は,2005年に対前年比2.6倍の550万台だった。2006年は同1.5倍の820万台に達すると予測した。PDPテレビのトップ・メーカーは,業績好調の松下電器産業で,2005年の台数シェアは約40%だった。

画面サイズ拡大とフルHDで単価下落を抑えるシャープ

 2005年度の販売計画では,シャープの液晶テレビが400万台,松下のPDPテレビが210万台と倍近い開きがあるが,シャープの液晶テレビ売上高と松下のPDPテレビ売上高を見ると,ほぼ拮抗している(下図)。2005年度通年では両社ともに約4000億円の売上高が見込まれる。


図●松下電器とシャープの薄型テレビ売上高の推移(2004年度第1四半期~2005年度第3四半期実績,2005年度第4四半期予測)
各社の決算資料から作成。松下電器の2005年度第4四半期の売上高は対前年比1.9倍とした。

 売上高と販売台数から2005年度のシャープの液晶テレビ平均出荷単価を計算すると,対前年度比12%減の10万円になる。一方,松下のPDPテレビは同38%減の19万円になる。単価がPDPテレビの方が高いものの,価格下落率では明らかに松下のPDPテレビの方が大きい。シャープは,30インチ以上の機種を対前年度比15ポイント増の35%と大画面化することやフルHD対応とすることで,平均単価の下落を抑えている。一方,松下は,同社の中村邦夫社長が「2008年に1インチ5000円になる」と発言したように,価格競争に真っ向から勝負する覚悟がうかがえる。このように,両社のテレビ事業戦略には差が見られる。

 その背景には,液晶テレビとPDPテレビのこれまでの画面サイズの変遷がある。液晶テレビは,小さい画面から次第に大画面に市場を拡大してきた。従って,高付加価値が打ち出しやすい。一方,それを迎え撃つPDPテレビは,もともと大画面を得意とし,さらなる大画面化で高付加価値という戦略が採れない。おのずと液晶テレビがPDPテレビの領域まで大画面化すると,それを押し下げるべく価格競争を強いられるのだ。

 世界のテレビ出荷台数は2億台近い。その膨大な市場に薄型化の波が押し寄せている。2005年の薄型テレビの台数比率は17%に達し,今後はさらに薄型化の傾向が強まり,早ければ2009年には薄型比率が50%を超える。大画面で液晶テレビ市場を拡大するシャープと迎え撃つ松下の争いはまだ続きそうだ。