試作したUWB向けチップの写真。
試作したUWB向けチップの写真。
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今回のLSIに集積した基本構成である。RFトランシーバと,OFDMの物理層回路を含む。
今回のLSIに集積した基本構成である。RFトランシーバと,OFDMの物理層回路を含む。
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OFDMの物理層回路の詳細である。2系統を備える「MRC(maximum ratio combining)」と呼ぶ技術を搭載した。
OFDMの物理層回路の詳細である。2系統を備える「MRC(maximum ratio combining)」と呼ぶ技術を搭載した。
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2つのアンテナを使うMRCによって,通信特性が向上する様子を示した。
2つのアンテナを使うMRCによって,通信特性が向上する様子を示した。
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 今回のISSCC 2006では,無線通信技術「UWB」に関する独立した技術セッション(SESSION 6)が設けられている。8件の報告があったこのセッション中,参加した技術者が「これは完成度が高い」と一目置く講演があった。台湾のファブレス企業であるRealtek Semiconductor Corp.と,米University of Californiaの共同研究グループが発表した,UWB通信向けLSIである[講演番号6.6]。

いち早く1チップに

 Realtek社らが発表したのは,UWB対応のRFトランシーバ回路と,OFDM変復調の物理層回路を1チップに集積したLSIである。これまでに発表されているLSIは,デジタル回路とRF回路を別チップで構成していた。これに対し,Realtek社らは,いち早く1チップへの集積に成功した。

 他社の技術者が完成度の高さに唸る理由は,集積度のほかにもう1つある。Realtek社らが「MRC(maximum ratio combining)」と呼ぶ技術を搭載していることだ。

映像データ伝送に向け信頼性高める

 MRCは,MIMO技術に似た手法で,2系統の送信回路と受信回路を用意して通信路の品質向上を試みる。Realtek社はMRCを搭載した理由を「UWBは室内で映像データの伝送などに使うことになる。ただし室内は,人の出入りや物の配置などで,通信品質は必ずしも高くない。そこでMRCで信頼性の向上を図る」(Realtek社の発表者)と述べる。同社によるとMRCを搭載することで,通信の信頼性は10数%向上するという。

 今回のUWB通信向けLSIの設計を担当したのは主に,Realtek社が米国カリフォルニア州アーバインに持っている設計拠点のチームである。同社は現在,Ethernetや無線LAN用LSIなどで急成長を遂げている。短期間でUWB向けLSIの開発にこぎ着けた理由を,Realtek社は「IEEEの標準化に参加して,規格に詳しい技術者や無線回路の設計に長けた技術者が,ここ数年でそろうようになったからだ」と説明した。今回のLSIの設計に参加した人員構成を聞くと,無線回路は米国の技術者が約半分を担当し,台湾の技術者が残りの約半分を担当したという。デジタル回路については,すべてを米国の技術者が設計したとする。