このところ,薄型の携帯電話機が相次いで登場している。先鞭をつけたのはNECだ。2004年2月に発表したカード型の携帯電話機「N900」の厚さはわずか8.6mmである(Tech-On!の関連記事1)。NECは,同機に続いて2005年9月に,厚さが11.9mmの折り畳み型携帯電話機「e949」を発表している(同記事2)。米Motorola,Inc.が2004年7月に発表した「RAZR V3」も話題をさらった。同機種の大ヒットは,その後のMotorola社の業績を押し上げたほどである(同記事3)。

 以上は,いずれも第2世代方式の対応機種だが,第3世代方式に対応した薄型機種も続々と市場に現れている。KDDIが発売する「W31T(東芝製)」や「A1405PT(韓国Pantech&Curitel Communications, Inc.製)」,ボーダフォンの「Vodafone 804SS(韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.製)」である(Tech-On!の関連記事4同記事5同記事6)。W31TとA1405PTの厚さはいずれも20mm,Vodafone 804SSの厚さは14.9mmと,最近は第3世代対応機でも20mm以下の競争になっている。

 そんな中でNTTドコモが発売しているのが,パナソニック モバイルコミュニケーションズ製「P851i(呼称はprosolid II)」)である。厚さは16.7mmで,カメラ付きではないものの20mmを大きく割り込む。Vodafone 804SSには及ばないが,NTTドコモの「FOMA」対応機の中では最も薄い。

部品を追加しても厚さは同じ

 パナソニック モバイルコミュニケーションズが製造する薄型機種としては,第2世代方式(mova)対応の「prosolid」がある。prosolidの厚さも16.7mmだが,prosolid IIでは前機種に比べて容量が大きなメモリや個人情報を収容するICカード(FOMAカード),2個のマイクロコントローラを搭載している。prosolidが搭載するマイクロコントローラは1個だった。つまり,prosolid IIでは部品を追加したにもかかわらず同じ厚さに収めることができた。

 同機種では薄型化に向けていくつかの工夫を施している。例えば筐体下部(手で持つ側)では「電池パック」「内部シャーシ」「プリント基板」などを見直した。同社は,国内向けの電池パックを1種類に限定していたが,今回はそれよりも1mm薄いものを採用した。これは,海外で利用実績があるものだ。薄くした分,面積は大きく,電池容量としては800mAhとほかのパックとほぼ同じ水準になっているという。

 電池パックを収容する内部シャーシは,従来は樹脂を全面に使っていた。樹脂を使うと複雑な形状を作り込めるが,強度を保つために厚くなってしまう。今回は,電池パックを収容するためバスタブ状になっている部分の底面をくり抜き,金属板(Mg合金)を張り合わせて強度を維持する構成にした。これで0.3mm薄くなる。ちなみに,この金属板は放熱にも効果を発揮するという。これにより,キーパッドと基板間の放熱シートを省くことができた。放熱シートの厚さは0.2mm~0.3mmで,これも薄型化に貢献した。

「片面実装がベスト」だが両面実装に

 各種部品を実装するプリント基板の厚さは,従来の0.8mmに対して0.5mmのものを採用した。一般に基板を薄くすると実装時に反るなどして不良率が上がる。しかし今回は,切り欠きの大きさや形などプリント基板の形状を工夫することで反りにくくしたという。今回は部品をプリント基板の両面に載せる両面実装である。「実装しやすさを考えると,片面がベスト」だが,すべての部品が載りきらず一部の部品はもう一面に実装せざるを得なかった。その一部部品の出っ張りにより端末の厚さが増さないように,端末の筐体にくぼみをつけて部品の頭を覆うようにした。

 液晶パネルを収容する筐体上面については,同社が「モノコック」と呼ぶ構造を改良することで薄くした。今回採用した構造では,Mg合金の板で覆った液晶パネルを,筐体の中に落しぶたのようにして収容する構成になっている。従来は液晶パネルと筐体は張り合わせるような構造になっていた。これで0.5mm薄くした。

 パナソニック モバイル社によると「できるだけ一般的な部品を使いながら薄型化を追求した」(同社第一モバイルターミナルディビジョン プロジェクトマネージャーの田端太一氏)とする。特注品を使えば薄くできるが,部品コストを押し上げてしまうからだ。今後も,特注部品を使わない方針は変えない予定で,材料を見直すなどしてさらに薄くする手法を探っていくという。