図1 第3四半期決算を報告するソニー 執行役 EVP 兼 CFOの大根田伸行氏
図1 第3四半期決算を報告するソニー 執行役 EVP 兼 CFOの大根田伸行氏
[画像のクリックで拡大表示]
図2 全地域で液晶テレビが増収要因に
図2 全地域で液晶テレビが増収要因に
[画像のクリックで拡大表示]
図3 エレクトロニクス部門の各事業の業績
図3 エレクトロニクス部門の各事業の業績
[画像のクリックで拡大表示]

 「予想外の好調に救われた」---。ソニーが2005年9月に投入した新ブランド「BRAVIA」の薄型テレビが,2005年のクリスマス商戦で売れに売れた。今まで莫大な営業赤字を計上していたソニーのテレビ事業に,黒字化に向けた光明が見え始めた。

 ソニーは,2005年度第3四半期(9月~12月)の連結決算を発表した。売上高は2兆3676億円で対前年同期比10%増,営業利益は2028億円で同47%増,当期純利益は1689億円で同18%増である。エレクトロニクス部門とゲーム部門,金融部門が好調だったことで,売上高と当期純利益は四半期ベースで過去最高を記録した。

テレビ事業は好調も「楽観視できない」

 不振だったエレクトロニクス部門は,売上高が1兆5958億円で,営業損益は789億円の黒字を計上した。実質的な営業赤字だった第2四半期と比べて,大幅な改善を見せた(Tech-On!関連記事1)。

 この改善に大きく貢献したのがテレビ事業である(Tech-On!関連記事2)。特に,液晶テレビ事業はすべての地域で増収要因となった(図2)。「当初の見込みに対し,収益は250億円プラスだった。そのほとんどが液晶テレビの好調によるもの」(ソニー コーポレート・エクゼクティブ SVP IR担当の湯原隆男氏)。CRTテレビ事業の不振が続いているために営業損益は19億円の赤字だったが,同377億円の赤字を出した第2四半期に比べると大幅な改善といえる。

 ただし,ソニーはテレビ事業の今後を楽観視していない。テレビ事業が黒字化する時期は,当初の見込み通り2006年下期を待たねばならないという。薄型テレビの値下げ幅が今後も大きいと予測しているからだ。「2005年秋の値下げペースは,多少落ち着いた感があるとはいえ,年率28%~29%ほどだった。第4四半期も,同期内に4%~5%ほど価格が下落するだろう」(湯原氏)。

パソコンとビデオ・カメラが好調,半導体はCCDが不振

 テレビ事業と並び業績を改善させたのが,パソコン「VAIO」を中心とする情報・通信事業である(図3)。売上高は2247億円,営業利益は212億円と対前年同期比231%増を記録した。特にノート・パソコンの売り上げ増と,コスト削減が寄与したという。このほか,ビデオ・カメラ部門や放送機器も好調だった。

 携帯型音楽プレーヤ事業も増収増益だったものの,2005年11月に投入した「ウォークマンAシリーズ」は期待通りの成果を出せなかったようだ。「ソフトウエアのバグなどの影響があり,特に日本では販売が不振だった」(湯原氏)という。ただし,第4四半期では最大の市場である米国での販売を予定していることから「年間販売計画は達成できる」と強気の構えを見せた。携帯型音楽プレーヤ事業の売上高は1846億円,営業利益は121億円の黒字である。

 テレビ事業のほか,営業赤字を計上したのが半導体事業である。赤字額は24億円だった。撮像素子がCCDからCMOSへ急速へシフトする中,CCDの価格が大きく下落したことによる。売上高そのものはゲーム機向け半導体への出荷増で対前年同期比17.5%の伸びを見せたが「会社内取引なので,営業利益には結びつかなかった」(湯原氏)という。このほか,2006年春にソニー・コンピュータエンタテインメントが発売する「プレイステーション 3」に向けた「Cell」などの開発コストも赤字額を拡大させた。

 ゲーム部門では「プレイステーションポータブル(PSP)」の販売が依然好調で「プレイステーション 2」の販売も前年並みを維持した。売上高は4192億円で対前年同期比48%増,営業利益は678億円で同52%増である。

関連記事:
ソニー,「QRIO」の開発や国内向けカーナビの生産を中止

■国内企業の最新の決算はこちらからご覧いただけます。