アップルコンピュータが1月11日に発売した86系マイクロプロセサを搭載した新しいiMac(17インチ・モデル)を入手した。分解する前にまずはセットアップして使ってみた。マイクロプロセサは1.83GHz動作の「Intel Core Duo」である。

 起動はかなり高速だ。電源を入れてから「ジャーン」という起動音が鳴るまで約5秒,そこから約20秒で起動状況を知らせるプログレス・バーが表示される。そこからデスクトップを表示するまではほとんど一瞬だ。これではプログレスバーを表示する意味がないほど。電源ボタンを押してから30秒以内にデスクトップが表示される。

 体感速度も速い。Finderは軽快で,操作に対してきびきび,というよりビュンビュンという感じで動く。Mac専用のWebブラウザ「Safari」を使って,Tech-On!を含むいくつかWWWサイトを表示させてみたが,どのサイトも通信が済むと一瞬で画面が描画されて心地よい。HD動画の再生も滑らかで驚いた。Apple社CEOのSteve Jobs氏が「これまでの2倍高速になった」と発表会で自慢しただけのことはある。

 そこでIntel Macの実力を,「Adobe Photoshop 7.0」を利用したPowerPC用ベンチマークで測ってみることにした。計測に使ったのは,HI-FI(http://www.hi-fi.jp/index@hi-fi.html)が配布している「HI-FI-Ultimate-Bench-PS7」で用意されたフィルタ処理の一部である。このベンチマーク・テストは37種類のフィルタ処理の性能を測るように作られているが,時間の関係で,最初の10種類だけを試した。比較対象にしたのはTech-On!編集部が所有するiMac G5。1.6GHz動作のPowerPC G5を搭載した旧モデルである。ただし,メモリー搭載量はIntel iMacの512MBに対し,768MBと多い。

 結果はフィルタの種類によってばらつきはあるが,旧製品であるiMac G5の方がおおむね速かった。10種類のフィルタの処理時間を合計して比べてみると,Intel iMacの速度は旧製品の約73%。つまり,Photoshopを使う限りは従来製品の方が速いことになる。Jobs氏もIntel iMacのお披露目になったMac World Expo/San Francisco 2006の基調講演で「普通の人が使うには十分」という言い方をしていたが,それを裏付ける結果になった。

 実はIntel iMacで従来のPowerPCプロセサ向けのソフトウエアを動作させる際には,OS内部に組み込まれた「Rosetta(ロゼッタ)」というバイナリ・トランスレータを使う。RosettaはPowerPC用のオブジェクト・コードを86系マイクロプロセサ用に変換する。つまり,既存のPhotoshopのようにPowerPCプロセサ向けのソフトは,プログラムを変換しながら動作することになる分,どうしても遅くなる。変換ソフトを間に挟んでいる事実を考え合わせると,旧モデルの73%という結果はよく健闘しているとも言える。ちなみに,Rosettaは米Transitive Corp.の動的コンパイラ技術に基づいて開発された(Tech-On!関連記事)。OSのシステム・コールは86系マイクロプロセサ用のMac OS Xに渡すため,米Transmeta Corp.の「Code Morphing Software」のようにすべてのオブジェクト・コードを変換する動的コンパイラに比べて,性能の低下は少ないとみられる。

 なお現時点で,86系マイクロプロセサ向けにコンパイルされたソフトウエアは,OSに標準搭載されたApple社製のソフトウエア以外にはほとんどない。Apple社は,86系向けとPowerPC系向けのソフトウエアを1本にパッケージした「Universal Binary」に切り替えるように,ソフトウエア・ベンダに働きかけているが,こうしたソフトが出荷されるのは3月ごろからになる見込みだ。

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いくつかのWWWサイトで試してみたがいずれもページは一瞬で表示される。スクロールも滑らかだ。CPUの利用状況を表示するユーティリティ・ソフトで見ると,二つのCPUコアが平均的に利用されているのがわかる。
いくつかのWWWサイトで試してみたがいずれもページは一瞬で表示される。スクロールも滑らかだ。CPUの利用状況を表示するユーティリティ・ソフトで見ると,二つのCPUコアが平均的に利用されているのがわかる。
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三洋電機が動画デジカメ「DMX-HD1」の発表会で配布したHD動画のサンプルを再生してみた。画面サイズを最大にしてもコマ落ちがなく滑らかに再生される。このサンプル動画をWindowsパソコン(2.4GHz動作のPentium 4搭載)やPowerBook G4(1.33GHzのPowerPC G4搭載)で再生すると,コマ落ちがひどく見るに堪えない
三洋電機が動画デジカメ「DMX-HD1」の発表会で配布したHD動画のサンプルを再生してみた。画面サイズを最大にしてもコマ落ちがなく滑らかに再生される。このサンプル動画をWindowsパソコン(2.4GHz動作のPentium 4搭載)やPowerBook G4(1.33GHzのPowerPC G4搭載)で再生すると,コマ落ちがひどく見るに堪えない
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HI-FI-Ultimate-Bench-PS7によるPhotoshopベンチマークの結果。iMac G5を100%とした相対値で表記した。Intel iMacが高速な処理もある
HI-FI-Ultimate-Bench-PS7によるPhotoshopベンチマークの結果。iMac G5を100%とした相対値で表記した。Intel iMacが高速な処理もある
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Photoshopベンチマーク実行中の様子。処理の種類によっては,このように片方のコアだけに演算負荷が集中する
Photoshopベンチマーク実行中の様子。処理の種類によっては,このように片方のコアだけに演算負荷が集中する
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