試作品のディスプレイ側
試作品のディスプレイ側
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試作品のディスプレイ側の裏面。ブースでは電池が切れてしまったようで,電源だけはケーブルで供給していた。
試作品のディスプレイ側の裏面。ブースでは電池が切れてしまったようで,電源だけはケーブルで供給していた。
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機器全体。ディスプレイ側はボードに立てかけて展示してある。
機器全体。ディスプレイ側はボードに立てかけて展示してある。
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キーボード側
キーボード側
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 東芝は「2006 International CES」で,ディスプレイ部分を取り外した状態で操作できるノート・パソコンの試作機を展示した。ディスプレイ部分の重さは570gであり,パソコン雑誌程度の重さに相当するという。マイクロプロセサやキーボードは本体の側に残してあり,画面情報のみを無線LAN「IEEE802.11g」でディスプレイ側に送る仕組みのため,1.5kg程度の重さであることが多いタブレット型パソコンよりも大幅に軽くできることが利点とした。現状で,ディスプレイの背面に搭載したLiポリマー電池で約1時間の動作が可能である。

 試作機を開発した同社 研究開発センター 先端電子デバイスラボラトリー 研究主務の山口一氏によると,「消費電力の大半はディスプレイのバックライトによるものなので輝度設定を工夫すれば現状のハードウエア構成で4時間程度は電池を持たせることができる見込み」という。

 今回の試作機のディスプレイ側は,ディスプレイのほかに,入力デバイスとして電磁誘導方式のデジタイザ,圧縮した状態で本体から送られてきた画面情報を伸張する復号化回路,無線LANチップセット,電池などで構成する。

 類似のコンセプトの製品には米Microsoft Corp.が提唱し,NECらが既に製品化している「スマートディスプレイ」などがある。スマートディスプレイはWindows XPを遠隔から操作するための「リモートデスクトップ」を利用して画面情報を転送しているが,今回の試作機は同社独自のプロトコルを使ったという。スマートディスプレイ端末の場合は,リモートデスクトップのプロトコル「RDP」に対応し,なおかつ端末そのものはWindows CEなどを搭載することが多い。

 今回の試作機の場合,画面情報を転送するだけのため「OSは特に必要ない。単純に無線LANからの情報を伸張して表示する回路があればいい」(同社の山田氏)という。なお,無線LAN上では画面情報をやり取りするとともに,端末のデジタイザからのポインティング・デバイスの入力情報を本体に送り返しているという。

液晶パネルの軽量化の恩恵をダイレクトに受けられる

 こうしたディスプレイのみの端末の場合,メインのマイクロプロセサは本体側に搭載するため,発熱量が多く放熱機構も大きくなりがちな高速なマイクロプロセサを利用したい際も,手に持って使うディスプレイ側は軽くできるという利点がある。また,より軽量な液晶パネルが現れた場合,その軽量化の恩恵を受けやすい。タブレット型パソコンやスマートディスプレイ端末の場合,液晶パネル以外の部品が多いため液晶パネル自体が軽量化されても,機器全体の重量をなかなか軽くできないという課題があった。

 今回の試作機では,利用シーンとして,本体を鞄など別のところに置いたまま,ディスプレイ側の端末のみを電子ブックのように使ったり,デジタイザのみ使用したりする用途を想定する。ただし,通常のノート・パソコンとして使う場合でも,キーボードの位置とディスプレイの位置を独立に調整できるため,キーボード部分とディスプレイ部分がヒンジを介して一体化している通常のノート・パソコンと異なり,打鍵しやすい位置と見やすい位置をそれぞれ最適化しやすいという。

 現在,製品化などは未定だが,展示会での来場者の感想などを踏まえて研究に反映していきたいという。課題としては,オフィスなど多人数が使う環境で使用した際,無線LANのチャネルは十分か,軽量化をさらに推し進める必要があるかどうか,などが挙げられる。