ソニーは2005年6月,テレビにおいて米国市場で使っていた「WEGA」ブランドを廃止し,代わりに「BRAVIA」ブランドを立ち上げた。実はその時点から,同社の市場占有率はうなぎのぼり。それまで10%以下をうろうろしていたのが,3カ月後の9月には30%に上昇。その後,11月に瞬間的に1週間の間,わずかに落ちたが(小売りの慣習で安売り期間のため),また12月は盛り返している。

 一方で、これまでトップだったシャープの液晶テレビの米国におけるシェアが急落した。これは,全世界ベースであまりに急激に需要がブレイクし,米国向けのパネル供給がまったく間に合わなくなってしまったという社内事情による。

 ではなぜ,こうも急激にシェアが向上したのか。これにはさまざまな要因があるが,まずブランドを変えただけでなく,ハイエンドのイメージを強烈に打ち出したことが挙げられるだろう。「XBR」という,「ブラウン管テレビ時代から,米国におけるソニーのテレビのラインアップで最高のステイタスを持つサブネーム」(米Sony Electronics社のTV product planning General Managerの斎藤重雄氏)を40インチ型の液晶テレビに与えた。韓国S-LCD社からのパネル供給もスムーズに実現した。

 そして重要なのは,WAF(Wife Acceptannce Factor)をきっちり反映したデザインと宣伝だったことだ。テレビは奥さんが気に入るものでないと売れない。この宣伝コピーが秀逸だ。

The World's first television for men and women.

 これはWAFをきちっと押さえた素晴らしい文章だ。かつてホンダが「スーパーカブ」を米国に売ろうとしたとき「You meet the nicest people on a Honda」との広告を打って大ヒットを飛ばした先例を思い出す。ホンダはこのコピーで名を米国に轟かせた。ソニーのBRAVIAも,それを追う好例になるのかもしれない。